現代社会で「子どもの知性」をどう育てるか ?自然のなかで導き出された「ある教え」とは
窪田:そうですね。山のような予測できないことが次々と起こる自然環境では、足腰以外の面も鍛えられます。だからこそ好奇心を掻き立てられるし、その予測不可能な状況を苦しいというよりも楽しいと捉えられるようになりますね。 ■教室という箱の中で学ぶことの限界 春山:日本における学校教育は、教室という箱のなかで先生1人に対し生徒三十数人が学ぶスタイルです。ですが、変化の激しい社会を生き延びていくことを考えると、自然のなかで大人も子どもも、あるいは子どもたち同士で学ぶことも必要だと思います。
窪田:確かに、学校教育を受けている間は、決まった教室で決まった先生に決められた学習内容を教わるわけです。今までは予定調和な世界だったのが、実際に社会に出るとだいたい自分が予想したことは裏切られることが多くなりますね。山などの自然のなかで鍛えられる判断力や直感力は社会でも大いに役立ちそうです。 春山:そうですね、自然の中で過ごすと都市のありがたさも身に沁みますよね。時間通り、予定通りに物事が進むことがいかに異常で、ありがたいことかわかります。
窪田:人類の長い歴史で考えると、現代化によって、本来なら人や季節によってそれぞれ違うはずである食事や起床の時間が画一的になりました。12時になったからお昼ご飯にしましょうといったことも、実はかなり不自然なんです。 本来はお腹が空いたら食事をする、日が昇ったら起床するというふうに、自然や自分の身体のサイクルによって個人が決めるものでした。自然の流れにそって生きる方が身体には良いので、1人ひとりが自分にとって何が心地良いか立ち止まって考える必要があるのかもしれませんね。
■厳しい自然を生き抜いたイヌイットの教え 春山:私は20代の頃、厳しい自然のなかで暮らしているアメリカの先住民やネイティブアメリカンに興味があり、アラスカに渡りました。 窪田:私もアラスカに行ったことがあります。一瞬恐怖を感じるくらい厳しい、ですが雄大な自然が印象的でした。 春山:その雄大な自然のなかで生き延びてきたイヌイットのご年配女性が、ビーズでバッグなどを作っていました。その作品をいくつか見せてもらったのですが、綺麗に対称的に縫われているビーズワークに、わざと1カ所色や数をずらしているところが必ずあるのです。どうしてか想像がつきますか。