【年収の壁で引き上げ言明】減収懸念で知事会苦言“政治とカネ”不信払拭の政治改革は
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石破総理は11月29日、臨時国会の所信表明演説で、「他党からも丁寧に意見を聞き、可能な限り幅広い合意形成が得られるよう、真摯に、謙虚に政権運営に取り組む」と、基本方針を述べた。石破総理は、防災庁を2026年度中の設置に向け準備していることをはじめ、重点事項である地方創生、日米安保による戦略上の利益に言及するなど、「石破カラー」をにじませた。政府が策定した総合経済対策の裏付けとなる、2024年度補正予算案を速やかに国会に提出し、早期の成立を目指すことを示した。所得税が課される年収ラインとなる「103万円の壁」については、2025年度税制改正の中で議論して、引き上げることを明言した。 政府は29日、一般会計の歳出総額が13兆9433億円となる2024年度補正予算案を閣議決定した。不足分は新規国債6兆6900億円を発行する。12月9日をめどに臨時国会に提出する見通しで、審議に入る。経済対策の柱にかかる経費として、AI(人工知能)・半導体分野への支援を行う「日本経済・地方経済の成長」に5兆7505億円、住民税非課税世帯に対する現金給付などを盛り込んだ「物価高の克服」は3兆3897億円、能登半島地震の復旧・復興などを柱とする「国民の安心・安全の確保」に4兆7909億円が計上された。石破総理は22日、「コストカット型の経済から脱却し、高付加価値創出型の経済への移行を目指す」と語った。 政府主催の全国知事会が11月25日、総理官邸で開かれた。知事会は、国民民主が主導する減税策「103万円の壁」の引き上げへの懸念を示した。この減税策は、非課税枠を拡大して手取りを増やし、地方経済の活性化にもつなげる狙いがある。一方で、国・地方で年約7兆から8兆円の減収が試算されており、地方から導入が不安視されていた。鳥取県の平井伸治知事は、「鳥取県で103万円の壁が見直された場合、子育て予算の半分がすっ飛んでしまう。財源について国がちゃんと考えて欲しい」と苦言を呈した。また、山梨県の長崎幸太郎知事は、「103万円の壁の減収の補填はマストだが、問題は補填の仕方。足りない部分を(国と地方で)折半というのはなし」と指摘した。与党内では、「年収の壁」の見直しを巡り、国税である所得税の基礎控除を引き上げる一方、地方税である住民税の基礎控除は据え置く「住民税分離案」が浮上している。 政府与党は、働く学生世代が年収103万円を超えると、親の扶養から外れる仕組みを見直し、「特定扶養控除」の年収要件を引き上げる方向で調整に入った。対象は19から22歳の学生世代で、必要な財源は年間で数百億円規模になると試算されている。今後は具体的な引き上げ幅を検討することにしている。特定扶養控除は19~22歳の学生世代が対象で、子どもの年収が103万円以下の場合に親の所得から63万円が控除される。子どもが扶養から外れると、控除が適用されず親の手取り収入が減るため、学生バイトらの働き控えにつながっているとの指摘が出ていた。 派閥の裏金問題を巡り、自民は政治資金収支報告書に不記載があった現職の参院議員27人全員が、政治倫理審査会に出席する意向を示していることを立憲民主に伝えた。自民と立憲民主の参議院幹部が会談し、自民は、27人が弁明の意向を示していることから、年内に政倫審を開くよう野党側に求めた。来年夏に改選を迎える議員からは、政倫審に出なければ非公認になるのではないかと懸念する声もあり、出席することで「政治とカネ」の問題に区切りをつける狙いがあると見られる。自民の松山政司参院幹事長は、「この年内に政倫審の開催をして頂いて、手続きに則って進めていきたいと」と述べた。 ★ゲスト:久江雅彦(共同通信特別編集委員)、加谷珪一(経済評論家) ★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)
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