「無痛分娩」で母親の重い合併症が減ると判明、硬膜外麻酔が妊婦の命を救うかも
ほかの国や地域に当てはめられるのか
米インターマウンテン・ヘルスで周産期を担当する医師アレクサンドラ・グロブナー・エラー氏は、今回の研究では産後の期間が6週間と設定されており、より一般的な2~4週間ではないという点が、結果をややこしくしている可能性があると指摘する。 「ほかの研究では通常、出産のための入院中に起こる合併症に焦点を当てます」と氏は説明する。「産後にどの程度の割合が重い病気になるかは複雑な問題であり、時間がたってから出てくる症例は、出産や硬膜外麻酔の有無と関連している可能性もありますが、そうでないものも多いでしょう」 ガットマン氏は、「これほどの規模では、間接的に影響する因子が無数に存在します」と述べている。医療の慣行は、病院や地域ごとに異なる可能性がある。「ですから、スコットランドの人々から得られたデータを、たとえば米サウスカロライナ州のチャールストンに当てはめるのは困難です」 事実、2022年に医学誌「JAMA Network Open」に掲載された研究では、硬膜外麻酔によって重い合併症の発生率が14%下がった。今回の研究よりかなり控えめな数字だ。こちらの研究も50万人以上の女性のデータを調べているが、対象となった場所はスコットランドではなく米ニューヨーク州の病院だった。 とはいえ、もし今回の研究結果がほかの国でも再現されるのであれば、それは大きな希望となる。 「妊娠にはリスクがつきものであり、マイノリティ集団であればなおさらです」と語るのは、米MUSC小児病院の医師エリザベス・マック氏だ。2022年の米国における妊産婦死亡率(妊娠中および妊娠終了後42日未満に妊娠・出産に関わる原因で死亡した割合)は出産10万件あたり22.3人、2020~2022年の英国では同13.4人だったと氏は指摘する(編注:厚生労働省の人口動態統計によれば、2022年の日本では同4.2人)。 「ですから、硬膜外麻酔のような出産に関わるリスクを減らす要素を公平に使えるようにしていくことが重要です」