中国で「軍最高幹部」2名が続けて失脚……習近平の海軍優遇人事に対する「陸軍大逆襲」の成功で「習体制打倒」の動きがさらに加速
ロケット軍も海軍出身者がトップに
そしてこの間、苗氏は習主席の意向を受けながら自らの勢力拡大も狙って、全軍において徹底した「海軍優遇」の人事を行なってきた。 その典型的な例が昨年7月、いわゆる腐敗問題でロケット軍の司令官を更迭した際、新しい司令官に任命されたのはロケット軍生え抜きの幹部ではなく、海軍一筋の軍人であったことだ。これは、苗氏が自らの息がかかっている海軍軍人を習主席に推薦したことの結果であると思われる。 そして昨年7月、陸軍出身の前国防相の李尚福が失脚したあと、その後任に任命されたのが海軍出身の前述の董氏である。そのままでは、習主席=苗政治工作部主任のラインで、中国軍は海軍によって制覇されていく勢いであった。
「習近平の軍」から「張又侠の軍」に
こうした経緯から考えみると、今回の董氏汚職調査の背後に浮上してきているのが、「海軍重視の習主席=苗氏ラインに対する陸軍の逆襲」という可能性である。そして、この逆襲の中心人物となっているのは、陸軍出身の大物軍人であって、軍事委員会筆頭副主席の張又侠氏であると思われる。 筆者が今まで数回にわたって伝えてきているように、今年10月辺りから、張氏が中心となって「静かな政変」を起こして、軍に対する習主席の指導権を排除する挙動に出ている模様であるが、どうやらここにきて、この張又侠主導の政変は、海軍の軍支配に対する陸軍の反抗の側面が露わになった。 海軍出身の董氏の粛清、苗氏解任と、どうやら張氏たちが、軍における「習近平・苗氏ライン」の潰しに大きな成果をあげた。 そしてそのことは当然、張又侠たちの「静かな政変」は成功裡に終わったことを意味し、苗華の排除と共に、習主席の軍支配はほぼ終焉した。これで人民解放軍はもはや「習近平の軍」ではなくなり、「張又侠の軍」となった。 これからの習政権はどうなっていくのか、そして中国軍はどうなっていくのか。今はまさに、巨大な嵐が巻き起こる前夜なのである。 【つづきを読む】習近平はもうおしまいなのか…中国人民解放軍で「静かなクーデター」!粛清に反抗してとうとう制服組トップが軍を掌握
石 平(評論家)