人気No.1は「おばんざい定食」! 昼は定食、夜は居酒屋の顔を持つ理想の一軒が新宿御苑前に誕生
それにしても、修業先は名だたる高級和食店ばかり。予約が取れない店もあれば、1人5~6万はかかる高額店と、櫻井さんが目指す店とは、ある意味真逆。“朱に交われば赤くなる“の例えではないが、こうした一流割烹で修業していれば、畢竟、自分も同じような高級割烹をやりたくなるものだ。が、櫻井さんは、少しもぶれることなく初志貫徹。店名も「なるべく親近感を持ってもらえるように“食堂”という言葉を選びました」とのこと。“わた”は、航(わたる)さんの愛称だ。
価格にしても、努めて抑えるように心を砕いた。「アジフライ定食」1,400円をはじめ4種類がそろうランチの定食は、すべて1,000円台。中でも人気No.1は「おばんざい定食」1,800円だそうで、櫻井さんによれば「11時の開店ですが、12時前には売り切れになることが多いです」という好評ぶりだ。
が、それも納得。丸い籠の中には、お刺身をはじめ、卵豆腐や南瓜煮、焼き茄子とジャコの和え物もあれば、鶏の柚子胡椒揚げ等々10種余りの小鉢がずらり。見た目も麗しく盛り付けられたその風情はまさに和食の八寸! 夜なら、これで一杯やりたいと思う飲兵衛も多かろう。名店で培った技が随所に生かされている。
ちなみに、写真はお正月バージョン。1月は、三が日も営業する予定だそうで、初詣帰りに立ち寄るには格好の一軒といえそうだ。
ランチもいいが、本領発揮はやはり居酒屋仕様になる夜だろう。コースはなくオールアラカルト。サービス担当のスタッフはいるものの、調理はほぼほぼ櫻井さんのワンオペ状態。それゆえ、メニューの数こそさほど多くはないが、そこは少数精鋭。何をとっても安定の味わいだ。
「だし巻き卵」や「ニラのお浸し」など気取りのない居酒屋的一品もあれば「マグロの炭火たたき」や「太刀魚天ぷら青のりあん」に土鍋の炊き込みご飯のような割烹仕込みの佳品もあり、酒飲みならずとも食指が動く。いずれも、一流店を経験すればこその下ごしらえの丁寧さがうかがえる。