FRB当局者、「シナリオ」に強い関心-新たな意思疎通の手法
(ブルームバーグ): パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる金融当局で今、流行語となっているのは「複数のシナリオ」だ。
米当局者の間では、基本的予測とは異なるさまざまな経済情勢にどう対応するか、意思疎通を図ることのメリットを指摘する声が増えている。
新型コロナウイルス禍後の景気回復はウォール街と米金融当局のエコノミストに何度もサプライズをもたらし、市場の金利見通しの急激な変化につながってきた。
こうした状況を背景に、金融政策運営の見通しを巡るリスクや不確実性を従来よりもうまく説明することを可能にする方法について、金融当局者はあらためて議論している。
クックFRB理事は先週、「経済の道筋は非常に不確実性が高く、当局の対応、金融政策の変更も不確実である可能性を意味する」とし、さまざまなシナリオを想定することが「とても有益な手段となりそうだ」と語った。
バーナンキ元FRB議長は4月、イングランド銀行(英中央銀行)の経済予測手法に関する独立の検証で、複数のシナリオを積極的に活用するよう提言。これを受けて、政策策定で複数シナリオを採用するアイデアが勢いを得つつある。
FRBの予測手法は時流捉えず-バーナンキ元議長が新たな方法提唱
米金融当局者の講演や公の発言などでは「シナリオ」という単語がたびたび用いられ、アトランタ連銀のボスティック総裁やサンフランシスコ連銀のデーリー総裁を含む幾人かの当局者は複数のシナリオを使い、経済がさまざまな方向に展開して金利の道筋に影響を与えることを紹介している。
米金融当局が見通しを伝える主な手段は失業率や実質GDP(国内総生産)伸び率、インフレ率、フェデラルファンド(FF)金利に関する当局者の四半期経済予測だ。予想の中央値は公式の基本的予測を意図したものではないものの、しばしばそのように見なされている。
シカゴ連銀のグールズビー総裁やクリーブランド連銀のメスター前総裁らは、政策の潜在的な道筋について一般の人々との意思疎通を改善するため、四半期経済予測にさらなる詳細を加えるべきだとの考えを表明した。