FRB当局者、「シナリオ」に強い関心-新たな意思疎通の手法
メスター総裁、FRBの意思疎通にはなお改善の余地-政策巡り
グールズビー、メスター両氏とも、四半期経済予測で「ドット・プロット」と呼ばれる個々の当局者の金利予測と、経済成長率や失業率、インフレ率についての見通しを相互に関連付ける匿名のマトリクスを公表することも検討すべきだとし、リスクシナリオを補完することも提言している。
クック理事やセントルイス連銀のムサレム総裁らは四半期経済予測の刷新を呼び掛けるには至っていないが、見通しに対し想定されるリスクにどのように政策対応するかを説明する通常の手段として、シナリオを選好していると見受けられる。
ムサレム総裁は6月、「最も可能性の高いシナリオと、現実となれば重要な結果につながりそうな比較的可能性の低いシナリオの両方についてのコミュニケーションが重要だ」とし、「最も可能性が高いものだけでなく、一連のシナリオに関する意思疎通が堅固な政策策定の重要な構成要素の一つだ」とコメントした。
今年初め時点では、金融当局者の年内利下げ回数予想は3回だったのに対し、金利先物市場で投資家が織り込む利下げ回数は約6回となっていた。その後、一連のインフレ統計が失望すべき数字となったことで、市場が織り込む利下げは4月に1回程度となった後、現在は2回に近づいている。
長期レビュー
FRBで金融政策とコミュニケーション担当のシニアアドバイザーを務め、現在はデューク大学の研究教授であるエレン・ミード氏は、米金融当局者の最近の発言からは、コミュニケーション政策に関する考察が続いていることがうかがわれると話す。
連邦公開市場委員会(FOMC)声明や四半期経済予測などの政策文書に大きな変更を加える場合、当局はゆっくりとしたアプローチを取るのが通常のパターンだが、パウエル議長は6月にコミュニケーションについて、当局が年内に着手する長期の戦略レビューの「範囲内」だと語った。
ミード氏は「6人程度の当局者が口にして、パウエル議長自身も5月の記者会見でシナリオに言及したことで、それを無視することはできない」と指摘。「FOMCのコミュニケーションは昨年晩秋以降、やや緊張をはらんでおり」、シナリオは金融当局の「助けになる」と論じた。