池袋暴走事故で母子2人死亡 高齢ドライバーの事故防止対策に関心高まる 警視庁150年 144/150
平成31年4月、東京・池袋で高齢ドライバーが運転する乗用車が赤信号を無視して暴走し、横断歩道で歩行者らを次々とはねた。9人が重軽傷を負い、松永真菜さん=当時(31)=と長女の莉子ちゃん=同(3)=が死亡した。事故を起こしたのは、旧通産省工業技術院元院長の飯塚幸三元受刑者。今年10月、93歳で死去した。 【写真】暴走した飯塚幸三受刑者の乗用車が歩行者らを次々とはねた事故現場 裁判では、踏み間違えに気付かずアクセルを踏み続けたことが事故原因と認定。高齢ドライバーの事故防止対策への社会的な関心を高める契機となった。 事故が起きたこの年は、免許自主返納件数が前年の約42万件を大幅に上回り、過去最多の約60万件に。道路交通法も改正され、過去3年間に一定の違反歴がある75歳以上を対象とする免許更新時の運転技能検査(実車試験)が義務付けられた。 一方、同年以降の免許返納件数は年々減少。生活の足を失うことへの不安も大きいとみられ、代替手段の確保や事故防止に向けた模索が続く。 「今を生きる人たちにはこの苦しみを知らないままでいてほしい」。事故で妻子を失った松永拓也さん(38)は講演などを通じて事故防止活動に取り組み、事故から5年となった今年4月には、慰霊碑への献花に際してこう語った。 元受刑者死去の一報を受け、拓也さんは「彼も若い女性と幼い子供の命を奪って刑務所に入り、そのまま命を落とすというのは無念だったのではないか」と複雑な心境を語った。(橋本愛)