「ゲーツ疑惑」報告書の公開巡り圧力合戦 次期米司法長官候補
米連邦下院倫理委員会は15日、次期司法長官候補に選ばれた共和党のマット・ゲーツ元連邦下院議員による性的な違法行為などの疑惑を巡って、調査報告書の公開の是非を決める投票を延期した。米メディアが報じた。司法長官の人事承認権を持つ上院の民主党は公開を要求。一方、共和党のジョンソン下院議長らは公開に反対しており、下院倫理委は双方からの圧力で板挟みになっている。 さまざまな醜聞を抱え、司法省や連邦捜査局(FBI)の解体を訴える強硬派でもあるゲーツ氏の起用をトランプ次期大統領が発表したことは、政界に衝撃を与え、共和党内からも反対論が浮上している。トランプ氏は、上院の人事承認手続きを飛ばす「休会任命」もちらつかせて上院共和党に圧力をかけている。 下院倫理委は2021年、ゲーツ氏による性的な人身売買、違法薬物の使用、選挙資金の不正流用などの疑惑について調査を始めた。ゲーツ氏は違法行為を全て否定しており、連邦捜査当局は23年に一連の疑惑について訴追しない判断を示した。 しかし、倫理委は独自に調査を続行。ABCニュースによると、性的な違法行為の被害者とされる女性は「17歳の時にゲーツ氏と性交渉を持った」と証言した。倫理委は近く調査報告書をまとめ、公開の是非について判断する予定になっていた。 ところが、ゲーツ氏は司法長官への起用方針が発表された13日、議員辞職を突如発表。共和党のトランプ派は「議員の身分を失ったので、倫理委の調査対象から外れた」として報告書を公開しないよう要求した。ジョンソン氏は当初「関与しない」としていたが、15日になって「もはや議員ではない人物に関して、報告書を公開すべきではない」と述べた。 一方、ゲーツ氏の人事承認の是非を判断する上院からは「辞職によって逃げるのを許すべきではない」(民主党のダービン上院院内幹事)との声が上がる。共和党のコーニン上院議員も、公開の是非にかかわらず「(人事承認の審査のために)上院議員が報告書にアクセスできるようにすべきだ」と主張している。 倫理委は当初、15日に報告書公開の是非を判断する予定だったが、双方からの圧力が強まる中、判断を先送りすることを決めた。 ゲーツ氏は16年に下院議員に初当選し、今月5日の下院選で5選を果たした。党派間の妥協に否定的な保守強硬派で、民主党批判の急先鋒(せんぽう)となってきた。23年には予算協議で民主党と妥協した当時のマッカーシー下院議長に反旗を翻し、史上初の議長解任に追い込んだ。共和党内でも異端視されてきたが、妥協を拒む姿勢を好むトランプ氏とは良好な関係を保っている。【ワシントン秋山信一】