「最大の障害」は家賃、FRBのインフレ抑制で-利下げためらう理由
ニューヨーク市が2月に発表した2023年の賃貸空室率は1.4%で、少なくとも1968年以来の低水準だった。ニューヨーク州議会は、市内に数十万戸の住宅建設に道を開くと予測される予算案の可決に向かっている。それでもミラー氏は、今後10年間は市場の勢いが衰えることはないとみている。
対照的に、フェニックス都市圏は新築住宅であふれている。同地域の家賃インフレ率は2022年に18%近くまで加速した後、今年3月までの12カ月ではわずか3%と、パンデミック前の水準を下回っている。
フェニックスにある不動産会社プレステージ・リアルティのエージェント、アーロン・ローソン氏は、借り手にとって「過去数年よりも今は容易だ」と言う。家主は管理費の免除や1年契約で家賃を1カ月無料にするなど、より多くのインセンティブをちらつかせている。ローソン氏は今年の家賃にはさらに下落圧力が強まると予想している。
エコノミストは全米レベルで家賃の差は縮小すると全般にみており、最近のCPI上振れは一時的なものになると予想している。UBSインベストメント・バンクのエコノミスト、アラン・デトマイスター氏と調査会社マクロポリシー・パースペクティブズのローラ・ロスナーウォーバートン氏は、新規賃貸の家賃指数はすでにパンデミック前の上昇率に戻ったと指摘している。
米労働統計局と不動産ウェブサイト運営大手のジロー・グループがそれぞれまとめる家賃指標が最も広く知られている。前者は昨年1年間の賃料の上昇率がわずか0.4%であるのに対し、後者は3.5%の上昇を示している。これとは対照的に、CPIの中にある指標は新規家賃と既存家賃の平均賃料を表しているため、賃料の変動が賃貸住宅全体に浸透するには時間がかかる傾向がある。貸借人が引っ越した後、家主が新たに家賃を引き上げるためだ。
以前はワシントンの連邦準備制度理事会(FRB)でインフレ予測部門を担当していたデトマイスター氏は「新規貸借人のどの家賃指数であれ、18カ月連続で市場家賃はパンデミック前のペースか、それを下回るペースでの上昇となっている」と指摘。「問題は、平均的な家賃がまだどの程度追いついていないかだ」と付け加えた。