「最大の障害」は家賃、FRBのインフレ抑制で-利下げためらう理由
(ブルームバーグ): 2022年に米インフレ率が7%を超えてピークに達した時、インフレは財とサービス全体に比較的幅広く及んだ。しかし、もはやそういう状態にはない。現在残っている問題は、主に住宅に関するものだ。
米連邦公開市場委員会(FOMC)が政策決定で参考にするインフレ指標は、家賃が大きな部分を占めている。年初からの数カ月間、このカテゴリーが予想以上に高水準だったことが、利下げをためらわせる大きな理由となっている。シカゴ連銀のグールズビー総裁は「住宅が最大の障害だ」と言う。「われわれは住宅インフレがどの程度低下するかという機械的な短期モデルを基本的に理解しているつもりだった。しかし、現時点ではわれわれが考えていたほどのスピードでは低下してない」と述べた。
家賃インフレの問題自体も、もはや地理的に特に広範囲に及んでいるわけではない。 高インフレが長引く北東部や中西部と、急速にインフレが緩やかになっている西部や南部では、状況に大きな違いがある。
北東部と中西部では、家賃インフレはピークから新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の水準まで4分の1も下がっていない。南部は半分余り、西部は8割近く下がっている。
この差はすべて供給量に起因しているようだ。不動産情報サイトのアパートメント・リストで住宅エコノミストを務めるクリス・サルビアティ氏は「現在、最も家賃が下落している市場と、最も建設が進んでいる市場がかなり重複している」と指摘した。
ニューヨーク市とアリゾナ州フェニックスは恐らくその対極を最も端的に表している。ニューヨーク都市圏では、3月までの12カ月間に消費者物価指数(CPI)の帰属家賃(持ち家を賃貸する場合の想定家賃)は5.6%上昇と、昨年のピーク6.3%上昇からさほど下がっていない。これに対して2020年2月までの12カ月は2.4%上昇に過ぎなかった。
同都市圏の賃貸住宅増設は他の主要都市に比べ大幅に遅れており、低・中所得者向けアパートの一部を確保するプロジェクトに対する州税の優遇措置が失効した2022年半ば以降、ほぼ足踏み状態が続いている。不動産鑑定会社ミラー・サミュエルのジョナサン・ミラー社長は「これはマンハッタンのような人口密度の高い市場を100年来悩ませてきた問題だ」と言う。