『FFXIV』最新拡張パッケージ『黄金のレガシー』のサウンドトラックがリリース! 祖堅正慶・今村貴文・石川大樹・矢崎早彩にテーマ曲と蛮神戦曲の制作意図を聞く【インタビュー】
「シャーローニ荒野」の曲はかなりフィーリングで作りました
◆個人的には石川さんが担当された「ヤクテル樹海」の楽曲が沁みました。 石川:ありがとうございます! 制作を始める前に、祖堅さんから「ヤクテル樹海のフィールドはオーケストラ調でいきたい」というリクエストがあったんです。そういうサウンドは自分自身の得意分野ではあったのですが、ふつうのオーケストラサウンドで鳴らし続けると、プレイヤーは飽きちゃうかもと思ったんです。そこで、通常のオーケストラにはないエフェクトやボーカルを取り入れることにしました。特にボーカルに関しては『漆黒のヴィランズ』のなかで「シヴィライゼーションズ ~ラケティカ大森林:昼~」という超名曲があるので、そこに影響を受けつつ、キャッチーなオーケストラ曲にできればと考えながら制作しました。 ◆今村節を感じる曲も数多くありました……! 今村:個人的には、「硝煙に青炎 ~シャーローニ荒野:昼~」の曲が好きです。この曲は「野郎2人が路線沿いを歩くみたいな感じのイメージです。西部劇みたいな感じ」というオーダーのもと制作しました。そうなると、相当渋い曲になるぞと思ったんです。今までの『FFXIV』にはない渋さを追求しました。荒野でガンマンがタバコをくわえて銃を持ちながら歩くみたいな風景をイメージしながらギターを弾いたら、結果的にこういう曲が仕上がったんですよ。かなりフィーリングで作りました。 ◆矢崎さんは先ほど得意ジャンルとしてピアノを挙げられていましたが、今回のサウンドトラックで、それが特に活かされたと感じている曲はどれですか? 矢崎:いちばん活かされたのは、「明けの空を見上げて」ですね。これは「Smile」のピアノアレンジ曲なのですが、元々は私がアレンジする予定ではなかったんです。実は、別の楽曲の進捗があまりよくなくて、どうしようかなと考えているときに、祖堅さんから「この曲、息抜きにどうですか?」と言われたんですよ。最初は「進捗があまりよくない状態なのに、新しい仕事を増やすとは……」なんて思っていたのですが、こういうシンプルでしっとりしたピアノ曲が最も得意ではあったので、本当に息抜きになって。結果的に全然進まなかった他の曲の制作も進むようなったんです。祖堅さんにすべて見透かされていました(笑)。 ◆実際、祖堅さんはそういうことを見抜いてお願いをした。 祖堅:そうですね。誰しも、曲の制作に詰まって先に進まなくなることはありますから。でも、本当はそんなに振りたくはなかったんですけどね。というのも、経験上、成熟する前から得意なことばかりやってしまうのは、あまりよくないんですよ。経験を積めば積んでいくほど、やったことがないジャンルを作れなくなってしまいますし、やったことがないジャンルの曲をやることが経験値となり、結果的に得意なことにも活かされるんです。 ◆なるほど。 祖堅:だから、早い段階からいろいろなジャンルに手を出しておくのは結構大事なんですよね。今回もそういう意図があって、矢崎にもいろいろな楽曲を割り当てていました。 矢崎:ありがとうございます。 ◆今回のお話を聞いていて、「遠き日の思い出 ~リビング・メモリー:開園~」と「Smile」もひとつの核となる楽曲なんだろうなと感じました。どちらも祖堅さんがアレンジを担当されていますね。 祖堅:「リビング・メモリー」は途中までは調子よく作れていたのですが、サビがなかなか出てこなくて。手詰まりになって、どうしようかなと息詰まっていたんです。そんなとき、ふと、少し前に亡くなった知人のお別れ会に行ったことを思い出して。「リビング・メモリー」って、“別れ”というテーマがあるんですよね。それもあって、その故人のことを思い出してみたところ、不思議なことにスラスラって急にサビが出てきたんです。きっと力を貸してくれたんだと思います。不思議な体験でした。 ◆ゲーム体験ももちろんですが、自分自身の経験や実体験などが音楽に反映されるようなときもある。 祖堅:やっぱりインプットは大事ですよ。わざわざインプットをしに行く必要はないですが、日常であったいろいろな出来事をひとつずつインプットしていくのは大切かなと思います。 ◆金言、ありがとうございます。「Smile」についてはいかがでしょうか? 祖堅:パッチ6.0のとある曲で、「みんなが手拍子をしながらニコニコできる曲をお願いします」と言われて作った曲があったんですよ。それを作っていたときに、「あっ、これめっちゃ苦手な感じだ」と思ったんですよね。どうも、ミュージカル調の音楽は苦手でして。でもね、映画「ブルース・ブラザーズ」は好きなんですよ。だから、「Smile」もどうにかなるだろうと思っていましたが、やっぱり苦手でした(笑)。 石川:すごくいい曲だと思いますよ! 祖堅:何とか形になってよかったです。苦手なりにも思いを込めて作って、とてもいい曲になったので、ぜひ聞いてください。 ◆最後に、サウンドトラックの発売を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。 祖堅:これまでの『FFXIV』のサウンドトラックと同じく、映像と音楽を楽しめるディスクになっています。映像はフルHD、音は96Hz24bitのハイレゾ仕様。高音質・高画質でフル尺のサウンドを堪能できます。また、すべての音楽はMP3でもディスクに収められていて、スマートフォンやPCにダウンロードできるようにもなっています。これ1枚でいろいろな楽しみ方ができるので、お得です。ぜひ物語に思いを馳せながら音楽、映像を楽しんでください。 ●photo/徳永徹 text/M.TOKU
M.TOKU
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