食事の配膳の手伝いは「時間感覚」が育つ。お手伝いを通じて行う【発達障害児の療育】を専門家がレクチャー
第6回 配膳
以前、食卓の片付けをテーマとしましたが、今回は「配膳」です。時間感覚を育てる上では食事は毎日、同じ時間に食べることが理想。「これくらいの時間になったらご飯なのだ」ということを子どもに意識させることになるからです。 しかし家庭の事情はさまざまですから、「だいたい同じ時間になるように」を頭の片隅に置いていただくだけで結構です。 ■対象 3歳から ■期待できる効果 ・日常生活の流れを意識でき、時間感覚が育つ ・位置に関する言葉を覚える ・配膳に関する様々な細かいルールや所作を学ぶ ・人からの依頼を受ける対応力 ・家族に喜ばれることで勤労意欲が育つ ・仕事を任せられることで責任感が育つ ・家族の役に立つ経験ができる ■配膳の準備時間 1.ゆっくり準備できるように逆算して、準備開始の時間を決める 2.はじめは時間になったら親が子どもに声をかける 3.慣れてきたら「○時になったら用意を始めてね」と声をかけ、子どもが自分で時間を意識して準備を始めるようにする。 4.親からの声かけを徐々に減らし、子どもが自分で動くようにする。 ■食器の並べ方 1.お茶碗は「左」汁物は「右」に置く 2.箸先は左にして置く できそうなら箸置きを用意し、箸置きの上に箸を置いてもらう。何種類か箸置きを用意して、家族それぞれに好みの箸置きでセッティングしてもらうのもよい。ナイフ・フォークの場合は、フォークは「左」、ナイフとスプーンは「右」に置く。 3.メインのおかずは奥の右側、小鉢は奥の左側に置く ■料理を盛り付ける 1.ご飯をよそう 子どもはご飯をよそうお手伝いが大好きです。一人で茶碗を持ちながらよそうのが難しければ、親が茶碗を持ってあげます。どうしたらいいかわからない子どももいるので、実際にやってみせます。 2回でよそうことを目指し「1回目はこれくらい」と適量をよそい、そして「2回目はふわっと」と言いながらおいしそうによそって見せましょう。慣れてくると、子どもたちの腕も上がってきます。 2.汁物をよそう 汁物は具材が鍋底に沈んでいることがあるので、具材と汁物のバランスを考えながらよそいます。汁物も基本は2回でよそうことを目指します。ご飯と同様、具材をお椀に入れ、汁をすくうやり方を実際に見せます。 3.おかずを盛り付ける 家族それぞれが食べきれる量を想像しながら盛り付けます。パパは大きいからこれくらい、妹はまだ小さいからこれくらいかな、と食べる人のことを想像しながら量を調整する経験を重ねる中で、人に配慮をする気持ちが自然に育まれます。 4.器をきれいにする ご飯、汁物、おかずを盛りつけたら、器の汚れを確認し、汚れていたら拭きます。「おいしく食べられるようにきれいにしようね」と伝えましょう 5.家族に渡す 家族に皿を渡すときは、両手でしっかり食器を持って渡します。食器をテーブルに置いてからでいいので、「どうぞ」などと声をかけるようにするのもよいでしょう。相手に配慮した配膳とことばかけを意識したいです。 6.美味しいうちに 家族がせっかく作ってくれた料理、私が一生懸命配膳した料理をすぐに食べてほしい、アツアツのうちに食べてほしい、早く食べないとおいしくなくなっちゃうよ…。このような感情を経験することも時間感覚が育つ上で大事だと思います。 ■発達障害の特性のある子どもの場合の注意 発達障害の特性のある子、特に自閉症スペクトラム障害のある子の場合、時間感覚が育ちにくい傾向があるので、そのことに配慮します。まずは欲張らずに、一つの作業から始めましょう。 時計が読めるならば、例えば午後6時半になったら「ご飯だよ」と家族を呼ぶことをお願いしてみましょう。その子が声をかけなければ食事にならないので、大事な仕事です。声をかけても家族が来なければ「早く来て~」と再度家族を呼ぶでしょう。時間感覚の育つ瞬間です。 箸を並べるのもよいと思います。誰の箸かを見分けて、箸先を左にしてきちんとそろえて置くように教えます。箸がなければ食べられないので、これも食事に欠かせない仕事です。配膳がまだ難しい子どもでも、箸並べなら無理なくできることが多いです。 本人が無理なくでき、やる気があり、やったという本人の達成感があり、ありがとうと言われる。配膳の場面でもそのようなお手伝いを考えてあげてください。