【毎日書評】部下が気持ちよく動けるようになる上司の声かけ対話術
管理職がすべきことは多岐にわたっています。学ばなければならないことは多く、受け入れる必要のあることもまた多様。 上を補佐して下を補助しつつ、自己成長を目指すことも必須条件です。職務に明るいことも当然の話で、人情の機微にも通じていなければならないため、人のなし得ることの大半を身につけていることが要求されるといっても過言ではないでしょう。 『管理職の手帳 BASIC100 部下に慕われ、上司に頼られる仕事のヒント』(岡野隆宏、あさ出版)は、そうした現実を鑑み、困難な問題を前に努力を続けている管理職の助けになることを目指して書かれたのだそうです。 管理職の悩みを解決するには、現実論と原則論が必要と思います。 面前の問題をクリアするには対症療法の現実論が必要です。一方、問題の予防や改善には原則論に基づいた根本的な処置が求められます。 とりあえずいまの問題を解決しようと弥縫策(びほうさく)ばかりに終始していては、次から次へと起こる水漏れを休みなく塞ぎ続けなければなりません。 実際、職場で起きている問題の多くは、少し視点を変えれば収まる類のものです。視点が誤っている原因は原則を見落としているところにあります。(「はじめに」より) もし日常的に対症療法ばかりを行っているのなら、その時点ですでに視点がズレている可能性もあります。そもそも積み上がった諸問題の性質も、それぞれケースごとに微妙に異なり、ひとつとして同じものはないはずです。 したがって解決法もケースバイケースになってくるため、本書では管理職が日常的に直面しているさまざまな問題を掲げ、その解決法を現実論と原則論の双方から解説しているのです。 きょうは第4章「人を動かすコミュニケーションの技術」のなかから、いくつかのトピックを抜き出してみたいと思います。
相互理解を深める対話とは?
いうまでもなく管理職は、上下左右の関係者に囲まれた中間に位置した存在。しかし、360度を見渡して仕事を進めるのはとても疲れるものでもあります。なぜなら人の考え方や意見には相違があり、異なる価値観やアイデアを取りまとめるのに苦労するから。 また、異なる意見を素直に認めず不満として抱え込む人、あることがらに価値を感じる人と感じない人など、タイプもそれぞれ異なります。だから対処が難しいわけですが、そういったケースに直面した場合は、「対話」することが有効な手段であると著者は考えているそうです。 「対話」とは特定のテーマに沿って話すことで、結論は必ずしも必要ではない、というコミュニケーションです。 ちなみに、よく比較されるコミュニケーションに「会話」と「議論」があります。 会話はテーマがない上に結論も不要なので、気軽なコミュニケーションです。雑談も会話のひとつで、最も頻度の高いコミュニケーションのかたちでもあります。 一方で議論は共通テーマがあり、かつ最終的には結論を求めます。(104~105ページより) 対話の意義とは、相互理解を図ること。「これについて、そう考えているのですね」「私はこのように捉えています」というように、お互いの見解に相違があったり、もしくは同様であることを認識して話し合えるのが対話の意義だということです。 しかし著者は、多くの企業では「対話」が不足していると感じているそうです。 「業務の多様化」「必要性の認識不足」「上下関係の影響(意見がいいにくい、聞いてもらえない)」など原因もさまざまでしょうが、お互いの考えがつかめない状態のまま業務を動かすのですから、円滑な業務推進が困難になっても無理はありません。 だからこそ、そんな状態を解消するために対話が有効だということです。(104ページより)