新種の恐竜を発見、「衝撃的に小さな巨大恐竜」ティタノマキア、6700万年前のパタゴニア中部
なぜ小さなティタノサウルス類が登場したのか
そのころのパタゴニアは、今とはまったくちがう世界だった。ポル氏によると、白亜紀後期のこの地域には、ラグーン(潟湖)や入江が点在していた。湿地や沼地が広がっていて、「肉を食う雄牛」という意味の名をもつカルノタウルスなど、最近明らかになりはじめた多様な恐竜たちが生活していた。 新種のティタノサウルス類が見つかったラ・コロニア累層からは、アヒルのようなくちばしを持つハドロサウルス、丈夫な鎧を着たような体のアンキロサウルスなどが見つかっている。今回の新種の恐竜は、化石の“氷山の一角”かもしれない。 ただし、この新種の恐竜がなぜここまで小さいのかについては、まだよくわかっていない。「この小ささは衝撃的です。白亜紀末のパタゴニアに生息していたほかのティタノサウルス類にも、このようなものはいません」とポル氏は言う。 現在、その理由について、いくつかの仮説が考えられている。そのひとつは、ティタノサウルス類が環境に適応した結果という説だ。 「可能性のひとつとして、大西洋が拡大し、パタゴニアの大部分を覆って陸地が狭くなったことが考えられます」とポル氏は言う。パタゴニアの陸地の半分ほどは、かつては浅い海に覆われていた。 ほかの場所でも、このような例が見られる。現在の東欧トランシルバニアにあたる場所には、白亜紀には島があったが、そこで見つかった化石から、食料が少ない狭い土地で生き残るために、竜脚類の恐竜が進化して小型化したことを示す証拠が見つかっている。 それ以外の環境変化が影響した可能性もあるかもしれない。ポル氏は、「生態系や気候が大きく変化して、ティタノサウルス類の大きさに影響を及ぼしたのかもしれません」と話している。この謎を解くため、今後もこの地域の化石の研究が行われる予定だ。
文=Riley Black/訳=鈴木和博