大阪城天守閣 32年ぶり年間最高入館者数更新の理由は
また新たな歴史ムーブメントを仕掛けていく
城内には幸村の甲冑を描き込んだ赤いのぼりが、はためく。府下に点在する幸村ゆかりの地で同じのぼりをみかけるが、一部は天守閣が提供したものだ。天守閣の広報スタッフ自身がのぼりを運んで立てることもあったという。行政の垣根を超えたオール大阪の発想を貫く。 電鉄会社などがのぼりを自社製作する場合、要請があれば、天守閣所有のデザインデータを提供してきた。官民連携にも積極的だ。天守閣が作成した「真田幸村ゆかりの地マップ」は、幸村が大阪府下に残した足跡を網羅。幸村ファンから「すべての足跡を訪ねてコンプリートしました」という報告も届いている。 スタッフのひとりは、城内を歩く人たちが大坂の陣の人間模様について熱く語り合うやりとりを幾度も耳にし、取り組み成功の感触をつかんでいたという。記録更新に伴い、大入り袋の配布を決定。民間の公演やプロスポーツならいざ知らず、公立施設で大入り袋という粋な顧客サービスは異例のことだろう。 一方で、北川館長は早くも次を見据える。もうひとつの落城事件だ。
「2018年には1868年の明治維新から150年の節目を迎えます。幕末期には将軍が京や大坂に常駐し、維新の引き金となった戊辰戦争で、大坂城は落城しました。大坂が維新の舞台となったという新たなムーブメントを起こすための準備を、すでにスタッフに指示しています」(北川館長) 先の先を見据える長期的視点と、巻き込み連携していく用意周到作戦。暮らしや仕事にも生かせそうだ。 詳しくは大阪城天守閣の公式サイトで。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)