【大人の発達障害かも?と思ったら】仕事や誘いをなかなか断れないという人に医師がアドバイス
職場でのコミュニケーションがスムーズにいかないと感じたことはありませんか? 昭和大学発達障害医療研究所の太田晴久先生によると、発達障害の特性が強い人にとって、コミュニケーションは悩みの種になりやすいのだそう。 【画像】大人の発達障害かも?と思ったら 「本来、人の脳の発達はさまざまで、発達障害が「ある人」と「ない人」にはっきり二分されているわけではありません。私にも、皆さんにも脳の特性があり、私たちはそのグラデーションのなかにいます」(太田先生) コミュニケーションにまつわる困りごとの傾向と対策を、太田先生に教えていただきました。
大人の発達障害の困りごと⑥仕事や誘いをなかなか断れない
目に見えないものを認識しづらい特性があると、相手の要求が自分にとって不利益になるかどうかの見通しをつけられず、すぐに判断できないことがあります。そこに衝動性が加わると、ついOKしてしまうこともあるでしょう。相手に嫌な顔をされるのが怖くて断れない、ということもあります。その結果、次々に仕事を引き受けすぎてプライベートな時間を削る、無理をして体調を壊す、大勢での飲み会が苦手なのに断りきれず、つらい時間を過ごす…といった困りごとにつながります。まずは返事を保留して、状況を見直す時間をつくりましょう。 〈自分でできる対策〉 ●返事はいったん保留して、仕事量を見直す 優先順位をつけるのが難しい人は、「何とかなるかな」と次々に仕事を受けてしまいがち。日頃から自分の仕事量や優先順位を把握しておくと、「できる/できない」の判断がしやすくなりますが、それが難しい場合は保留の返事をして、次の3ステップで対応しましょう。 ①まずは保留の返事をする 「できるかどうか考えさせてください。夕方までにお返事します」「社に戻って部長に確認してから、本日中にご連絡いたします」など、丁寧に伝えて返事を待ってもらう。 ②自分の仕事量を見直す 今抱えている自分の仕事量を具体的に把握する。時間の感覚が弱い場合は、ひとつの作業にどれくらいかかるか時間をはかり、総時間の目安をつかむ。 ③難しい場合は相手に説明をして断る 「今の仕事が終わるのが来週末なので、急ぎの仕事を受けられません」「検討しましたが納期に間に合いそうになく、ご迷惑をおかけすると思いますので」など、具体的な状況を伝えて断る。 ●疲れているときは無理せず断る 断れないのは、「相手に嫌われたくない」という思いがあるからかもしれません。けれど、つらい思いを我慢して心身を壊しては本末転倒。特に疲れているときは、誘いを断ることが結果としてお互いのためになります。断るときのコツは、最初に誘ってくれたことに対するお礼を伝えること。断る理由は「残念ですが先約がありまして」など簡単な言葉でOK。また、社内での雑談がつらいときは、「お手洗いに行ってきます」「ちょっと急ぎの仕事があるので」など、その場を上手に離れるための言葉を活用しましょう。 〈周囲ができること〉 ●無理強いせず、態度や行動から察したりフォローしたりする ASDの特性が強い場合、感情が表情に出にくいことがあります。心はつらいのに淡々として見えるため、周囲は「仕事を頼んでも平気だろう」と間違った判断をするかもしれません。 頭痛を訴えたり、作業スピードが落ちていたりするときは、「何かつらいことはない?」と本人に聞いてみましょう。 昭和大学発達障害医療研究所 所長 太田晴久 精神保健指定医、日本精神神経学会 指導医・専門医。2002年に昭和大学医学部卒業後、昭和大学附属病院、昭和大学附属烏山病院 成人発達障害専門外来などで勤務。2012年から自閉症専門施設のUC Davis MIND Instituteに留学し、脳画像研究に従事。2014年から昭和大学附属烏山病院、発達障害医療研究所にて勤務し、現在は昭和大学発達障害医療研究所 所長(准教授)。特に思春期以降の成人を中心とする発達障害の診療や研究に取り組んでいる。著書に『大人の発達障害 仕事・生活の困ったによりそう本』(西東社)など。 イラスト/hakowasa 取材・文/国分美由紀 編集/種谷美波(yoi)