内野聖陽が『カメ止め』監督とタッグ、脚本の書き直しにとことん付き合ったワケと役への思い
「“引き出し演技”になってきたらもうアウトだと思う」
徹底的に役と向き合うことで知られる内野。『風林火山』(’07年)の山本勘助から『きのう何食べた?』(’19年など)のケンジまで、変幻自在。 本作での熊沢は“ザ・おじさん”。そのオーラは完全に消し去られ、イケてない。しかし愛らしく、非常に新鮮だ。改めて、役作りで大切にしていることを聞いてみると、 「やっぱり演技って作り物でしょ、しょせん。その作り物の中に自然の摂理を見たい。カッコいいことを言うつもりはなくて、ちゃんとリンゴが重力に従って落ちる、みたいな。人間はやっぱりその中で生きていて、自然なものに心を動かされたりする。 だから自然であることが、僕は演技でとても大事だなと思っているんですね、これでも(笑)。僕の演技はトゥーマッチで、演劇くさいとか言われることもあるんだけど、それでもくじけずやっているんですよ(笑)」 近年は特に、挑戦的な役柄が多いようにも感じる。 「その意識はないけどなぁ。でも怪獣(『鋼の錬金術師 完結編』’22年)もやったし、確かにね(笑)。やっぱり、まとまっていってしまうことは嫌い。あるいは“引き出し演技”になってきたらもうアウトだと思う」 だから、似たような役を提示されたときには、あまり食指が動かないのだと本音を語る。 「やっぱりこの年になっても、新しいものが眠っているはずだって思いたいんですよ。“へぇ、僕にこんな役が来るんだ。面白いじゃん!”っていうね。内野聖陽の中からまた新たな何かが出てくるかもしれない。でも、そういう役を選んじゃうとやっぱり苦しむんだけど(笑)。でも苦しみの中からのほうが、いろいろな発見ができるんですよね」 安易なほうは選ばない。新たな苦しさに挑み続けている。 内野聖陽に聞いた「怒ることってある?」 理知的で穏やかなイメージの内野だが、怒ることはあるのだろうか? 「理知的? それはね、間違ってます(笑)。基本的には抜けているといいますか、結構ズッコケ系の失敗や、大事なことを忘れていたりしていますよ(笑)。上田監督も言っていたけど、歴史を変える瞬間には必ず怒りがあり、大きなことを成し遂げる人にとって怒りは大事なパワー。 だけど社会生活においては毒薬。人間関係で“あれ?”と思うことがあっても、やっぱり抑えちゃうことが多いですね。たとえ腹の中で“ふざけるんじゃない!”と思っていようとも“はい、ですよね~”って(笑)」 『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』 11月22日(金)新宿ピカデリーほか全国公開 配給:NAKACHIKA PICTURES JR西日本コミュニケーションズ