【市川紗椰の週末アートのトビラ】竹久夢二美術館「夢二の旅路 画家の夢・旅人のまなざし」をご案内
竹久夢二『夢二画集 旅の巻』カバー 1910年 明治時代後期に人気を博した夢二の画集。旅をテーマにしたシリーズのカバー。世界各国の衣装をまとった人物のイメージは、舶来の雑誌や画集をもとに夢二自身が想像をふくらませて描いたもの。色使いもきれい!
『水竹居』 1933年 夢二の最晩年、念願のヨーロッパ旅行で描いた美人画。ドイツ滞在中に、現地の女性をモデルに描いたのだそう!
トビラの奥で聞いてみた
展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは…竹久夢二美術館 学芸員 徳重美佳さん 市川 夢二の描く美人画は、和とも洋ともとれる唯一無二の個性がありますね。 徳重 はい。浮世絵で描かれた美人画を進化させ、夢二による新しい価値観を加 えた女性像は、明治後期から大正期に大ヒットし、日本人の審美眼に大きな影響を与えたといわれています。 市川 どうやって今までと全然違う女性像の描き方に行き着いたのでしょう? 徳重 当時は、外国から新しい文化が急速に入ってきました。そこに、夢二の理想とする女性のイメージが融合して生まれたのではないかと思います。 市川 同時代のアール・ヌーヴォーの絵画からの影響もすごく感じますね。 徳重 はい、夢二は若い頃から日本にいながらにして、輸入雑誌から情報を仕入れていました。そこにウィリアム・モリスやビアズリー、ミュシャらの作家が紹介されていたのでしょう。彼らと似た印象の絵や、オディロン・ルドンなど世紀末に活躍した画家からの引用も、作品の中に残されています。 市川 スタイルの変化が、世界の美術史と重なっているのがわかって面白い! 徳重 そうなんです。彼が旅する人生を選んだ理由には、新しい刺激を常に心に与えたいという欲求もあったと思います。また、旅人として一歩引いた目で世間を見ているところも感じさせます。今回、「旅」をキーワードにして、今でも時代の少し先を行くような、斬新さのある夢二の魅力を感じていただけたら嬉しいです。