[国スポ少年男子]惜敗の中で感じた確かな手応え。北海道の10番FW多田蒼生(札幌U-18)は全国大会でも楽しんでプレー
[9.22 国スポ少年男子2回戦 埼玉県 1-1(PK5-4) 北海道 鳥栖スタジアム北部グラウンドB] 【写真】ジダンとフィーゴに“削られる”日本人に再脚光「すげえ構図」「2人がかりで止めようとしてる」 初戦で山口県を2-0で撃破した北海道が次に挑んだのは埼玉県。世代別代表をズラリと揃え、優勝候補の一角でもあるチームが相手でも北海道の選手は気後れする様子は見られない。FW多田蒼生(札幌U-18、1年)はこう話す。「埼玉には代表の選手が多くいるけど、自分たちには代表の選手がいない。普通の人からすれば『埼玉が勝つんじゃないんか』と思われているはずですが、自分たちはそれを打ち破っていこうという気持ちで挑んだ」。 前半9分にFW中島大翔(大宮U18、1年)に先制点を許したものの、「失点以外は自分たちのペースで試合ができていた」と多田は振り返る。実際、前線からのハードワークで相手にプレッシャーをかけ続け、マイボールにすればチーム立ち上げの頃から拘ってきたパスワークによる崩しで埼玉県の選手を翻弄していた。 後半に入ってからは攻撃面での持ち味を発揮し、押し込む時間が増えた中、キラリと光るプレーを続けたのは10番を背負う多田だった。「好きな選手はアントワーヌ・グリーズマン。あの選手もおさめるタイプのFWではなく、動きながら周りを使ってゴールに向かっていくので凄く参考になる」。言葉通り、FW登録ではあるが、少し引き気味の位置からアイデアのあるプレーを駆使しながら、味方との連携でゴール前に顔を出していくタイプのストライカー。後半4分には彼の特徴が前面に出たプレーで、北海道が反撃の狼煙を上げる。 自陣の中央右寄りでボールを引き出した多田は、右前方にいたMF宮口春輝(札幌U-18、1年)へのパスを選択。そこから、「チームで自分以外に引き分けや勝ちに持って行ける選手はいないと思っていた。だから、自分がやるしかない。ボールをもらった時に、前に当ててすぐ走っていこうと考えていた」と右サイドの高い位置まで走り込んでボールを貰いなおす。最後はゴール前にクロスを上げると、反対サイドから走り込んだMF佐藤悠飛(札幌U-18、1年)が頭で合わせて、同点に持ち込んだ。 以降も北海道が決定機を作りながらも勝ち越し点を奪えないまま試合が進むと、PK戦で敗退。試合後、多田は「通用した部分も凄く多かったけど、勝利に導けなかったし、ゴールという結果を残せなかった。そこは北海道に帰ってからもっと練習して、得点がもっと取れる選手になりたい」と唇を噛んだ。 悔しい結果で大会を去る形になったが、多田にとっての収穫は大きかった。昨夏に挑んだ日本クラブユースサッカー選手権(U-15)は緊張して、プレーを楽しめなかったが、今回の国スポは「ウォーミングアップからみんなで思いっきり声を出して、楽しんでやれていた」。 対戦相手には中学1年生の頃に参加した「U-13フューチャートレーニングキャンプ」で交流を深めたMF小川直澄(浦和ユース、1年)がいた。試合前には「久しぶり。お互いに楽しくやろう」と声を掛け合っていたが、70分間の熱戦を終えて充実感を感じている。「凄く上手くいったし、ずっと楽しかった。国体で楽しむところが一番身に付いた」。 大会で示した攻撃センスは確か。次なる全国大会でもプレーを楽しみながら、今度は結果を残してチームを上位に導くつもりだ。 (取材・文 森田将義)