刑務所ライブ500回超。“受刑者のアイドル”仕掛け人の信念「車と家を売って資金を捻出」
出所して社会で頑張っている姿に「胸が熱くなる」
20年以上精力的に傾けたプリズンコンサートによって、受刑者の間でPaix2は確かな知名度を得た。当然、彼らとの交流も生まれる。なかには深く印象に刻まれる人もいるという。 「ありがたいことに出所後、ライブに足を運んでくれる方も大勢いて、皆さんが社会で頑張っておられる姿を見ると胸が熱くなります。ある元受刑者の方からご連絡をいただき、お目にかかることになりました。ライブにも熱心に通っていただいていたあるとき、ぱたりといらっしゃらなくなりました。すると一通の手紙が刑務所から届きました。また罪を犯してしまったことを謝罪する内容の手紙でした。私の周りには、相手にするのを辞めたほうが良いという人もいました。けれども、私は放っておくのは違うと思ったんです。 文通をしていくなかで、社会のどこにも優しく扱ってもらえる場所がなくて困っていること、刑務所であれば丁寧に接してもらえると感じていることを知りました。私は『だけど、刑務所にいることが幸せだと考えるのは間違っているよ』と伝えました。ちなみに現在出所して、就職もすることができ、職場の人間関係にも恵まれているということです。その人のためになるのであれば、さまざまな形のエールを送ることで応えたいと思っています」
金持ちにはなれないけれど…
片山氏なりのエールは、こんな信念のもとに送られる。 「あるとき、大金持ちの友人に『どうしたら金持ちになれるのか』を聞いたことがあるんですよ。すると、『片山さんには無理』と即答されました(笑)。その人いわく、稼いでいる父親の背中を見ていないから無理だということで。あわせて、ビジネスの世界では、金額交渉をするときに相手の懐を気にしてしまう人は儲けられないんだそうです。確かに、私は幼い頃から母の懐具合をいつも心配していました。それを聞いて、私はお金儲けをする人にはなれないけど、別の何かにはなれるのではないかと思ったんです。 先ほどもお話したとおり、私はかつていろいろなことに困っていました。周りにも困っている人がいました。どんな困りごとであれ、力になりたいという思いが強いんです。くわえて、最終的にはお金がどれほどあっても対症療法にしかならないことも知っています。本人が自覚して行動を変えなければ、その場しのぎのお金をいくら与えても、本当に生き方を変えることはできません。お金ではない、別のアプローチでさまざまな人の状況を解決する手伝いができたらいいと思っています」