球界大御所が辛口評論「阪神快進撃は本物じゃない。巨人がだらしないせい」
阪神が快進撃を続けている。2014年以来の貯金「10」でセ・リーグの首位に立ち、そのペースは1985年の優勝時さえも凌ぐ。球界大御所の元ヤクルト、西武監督で巨人OBの広岡達朗氏に、その阪神についての意見を伺ったが、「阪神の強さは、まだ本物じゃない。補強に失敗した巨人のていたらくのせいだ」と、一刀両断に切り捨てた。 「32も失策のある阪神がトップにいること自体がおかしい。それだけ他のチームも何かしら同じような問題を抱えているということ。レベルが低い戦いの中で上にいるだけなのだ。特に巨人の不振、だらしなさが目に余る。 30億円ともいわれる補強費を使い、陽、森福、山口という3人をFA補強したが、誰も1軍にいない。そのうち出てくるのだろうが、重要な開幕の1か月半の戦いに間に合わない補強など失敗だ。調査の段階で彼らが故障を抱えていることはわかっていたはずなのに、補強に動いたフロントに問題がある。 それと、結果の出ない選手をいつまでも使っている余裕など、今の巨人にはないだろう」と、阪神の首位はライバル不在の消去法でそこにいるだけに過ぎないと、厳しい意見を述べた。 確かに巨人は、長野や小林が打率1割台、中井、立岡も、打率2割2分台と落ちてきていて、坂本、阿部の頑張りだけでは追いつかず、攻撃に迫力はない。加えて守りでもミスが目立ち、特に広島に1勝7敗と大きく負け越している。貯金は「1」。チームに勢いはない。広岡氏が指摘したように下半身に故障を持つ陽岱鋼は、まだファームのゲームにさえ出れず、山口俊はようやくシート打撃登板。左のワンポイントの森福も通用せずに2軍落ち、再昇格する予定だというが、まだ信頼感はない。 大型FA補強も、ここまではプラス効果はゼロだ。 そして広岡氏は阪神が抱える問題についても厳しい見方を突きつけた。 「阪神の内野守備には伝統がある。昔話で恐縮だが、吉田義男、鎌田実、三宅秀史と、名手と呼ばれる人が揃っていた。試合前の内野ノックを見るだけで値打ちがあった。その伝統はどこへ行ったのか。サードにコンバートされた鳥谷にしても下手になっている。上本も基本ができていない。まあ阪神だけに限らず、球界全体を見渡して、名手といわれている選手が広島の菊池一人では寂しい。菊池にしても、昔はあれくらい守れて当たり前だった。明らかに全体のレベルが落ちている。阪神の失策が減らず、名手が減った理由は明らかだ。コーチが野球を教えていない。コーチの責任である」 広岡氏が指摘するように1950年代後半から1960年代の阪神は、牛若丸と呼ばれた吉田氏の華麗なショートの守備と、セカンドの鎌田氏のグラブトス、サード、三宅のファインプレーをファインプレーに見せない堅実なプレーは、それだけで銭を取れる素晴らしいものだったという。その後も、掛布雅之2軍監督、岡田彰布氏、平田勝男コーチらに受け継がれていたが、今の阪神内野には、その伝統の火は消えてしまっている。