金正恩氏は核を手放して体制温存できる道を模索?
6月12日にシンガポールで開かれる米朝首脳会談で、非核化の議論はどこまで進むのか。5日に東京の外国特派員協会で会見した慶應義塾大学の礒崎敦仁准教授は、今後のことは予測不能だとした上で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が核を手放しても現体制を温存できる道を探っている可能性を指摘した。「完全な非核化」の実現は、アメリカのトランプ大統領がどこまでそれにこだわって交渉するかにかかっていると述べた。
北朝鮮は本当に核を放棄する?
北朝鮮の核放棄をめぐる約束は、1994年の米朝枠組み合意、2005年の6か国協議での合意があったものの、これらは最終的に反故にされてきた。 また、核開発と経済発展を進める「並進路線」を正恩氏が掲げた際、核開発計画を放棄したリビアのカダフィ体制が最終的に崩壊したことを「教訓」と表現し、体制維持のために核を持つ必要性を強調した経緯もある。 礒崎氏は「過去の経緯をなぞると疑わしく見ることはできるが、北朝鮮の論調から読み解いたことを、あえてここで申し上げる」と切り出し、北朝鮮が核を放棄する可能性について見解を語った。 「核を持たなくても体制が保証される、つまりトランプ以降の政権も北朝鮮を攻めることがないと確証が持てるのであれば、取り引きをしてもよいという段階に至ったように見える」 礒崎氏の説明によると、韓国や日本といったアメリカの同盟国が周囲にいることで、北朝鮮は「核を持たなくてもアメリカは手出しができないということを昨年悟っただろう」。またこうも語った。「デメリットの大きい核兵器を何十年も持ち続けるより、核を手放す判断をすることで今の体制をそのまま温存できる可能性を考えたのではないか」 「非核化に向けた用意」は北朝鮮でも行われているように見えるという。例えば、並進路線から「核開発」を外した時期が、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を成功させたと主張した昨年11月ではなく、米朝首脳会談の開催が決まった後の今年4月だったことを挙げる。 アメリカが求める「完全な非核化」の実現は、トランプ大統領がどれだけこだわって交渉するかにかかっているとの見方を示した。