「オリオンビールだけが成功するのではなく、地元企業含めて沖縄全体が潤えば…」凄腕社長が多角化戦略の目標に掲げる「沖縄製造業として初の上場」
沖縄が誇るビールメーカーといえば「オリオンビール」である。地域に根差し、土着のブランドとして65年以上愛されてきた“県民ビール”だ。最近では、ビールのほかにもワインの開発やホテルの運営など、事業の多角化を積極的に行なっている。ビール以外の事業にも取り組む背景やIPOを見据えた展望について、オリオンビール株式会社 代表取締役社長 兼 執行役員社長CEOの村野一氏に話を聞いた。 【画像】2024年4月リニューアルされた「オリオンビール」が手がける注目のホテル2棟
社員の自信を取り戻すために課した「目標必達」
現在、オリオンビールの陣頭指揮をとる村野氏は、さまざまな企業を渡り歩いてきた“プロ経営者”として知られている。 ソニーの海外拠点では社長を務めたほか、出版社大手のデアゴスティーニ・ジャパンとカミソリメーカーのシック・ジャパンでも日本法人の社長として辣腕を振るってきた。そんななか、コロナ禍で厳しい状況におかれていたオリオンビールの業績回復に向けて村野氏に白羽の矢が立った。 奇しくも、就任当初はコロナ禍の真っ只中。そこから、いかにしてオリオンビールの立て直しを図ったのか。 「最初の3か月はどこをテコ入れすべきか考えた」と話す村野氏は、“目標必達”がオリオンビール浮上の最重要事項だと見定めたという。 「簡単に言うと、目標を達成して自信を取り戻す。個々の営業マンが見積もった予算を積み上げ、会社全体の予算を決定するという方針に変えました。やはり、人は自信を持つと物事がスムーズに回るようになるんですよ。 営業マン一人ひとりが予算を決め、目標必達のために全力投球する。その総和で積み上げた予算を達成することで、会社に勢いをつけようと考えたのです」(村野氏、以下同) 今までも、沖縄や株主の期待に応えようと頑張っていたものの、成果には結びつかずに予算未達が続いていた。 そうした状況を打破すべく、「必ず目標必達」を営業マンにコミットさせ、社内に新たなカルチャーの風を吹かせたのだ。営業現場の改革を行なったことで、村野氏が社長就任した初年度から全社の予算を達成。「やればできる」という自信が社内に根付いてきたという。 「コロナ禍と重なったこともあり、当時は『一体、私たちはどうなるんでしょうか』という一抹の不安を抱える社員が多かった。それでも、数字を作ることで道を拓いていける、状況を変えられると考えていました。 『社員が自信を持ったら、オリオンビールはさらに上に行ける』。そう確信していたこともあり、優先順位を挙げて営業現場の改革から着手したのです」(村野氏) もうひとつはマインド面の働きかけだ。ビール会社特有の習慣として、お酒の液量で評価する、というのがあった。