BABYMETALが主催する「FOX_FEST」。世界のどこにもない新たなメタルフェスをレポ!
これだけクセの強いバンドのあとでも全く見劣りしないのが今のBABYMETALのすごいところで、オープニングムービーが流れはじめるとすぐにBABYMETALの空間へと切り替わる。最初に披露したのは「BABYMETAL DEATH」だ。ステージ上にはステージの3分の2ほどを占める幅の2階ステージが設置され、3人はそこから登場した。 「Distortion (feat. Alissa White-Gluz)」では12機のフレーマーが火を吹き、レーザーが飛び交う中、SU-METALはいつも以上に素晴らしい声を聴かせてくれた。ラスサビでの声の伸びは特に気持ちよかった。これはライブ中ずっと感じていたことで、近年最もいい歌唱だったと思う。 続く「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」では大量のタオルがフロアやスタンドで振り回され、サビでは、歌う代わりにSU-METALはひたすら「ジャンプ! ジャンプ!」とあおりまくった。一転して、「BxMxC」ではダークに展開。サーチライトのようにゆっくりと動く照明と不意に激しく動くレーザーの対比が不穏でいい。SU-METALのボーカルは狂気をはらみ、鬼気迫るものがあった。この曲はいまだにわかりやすく変化し続けていて、それを感じるのがいつも楽しい。 そして、皆が待ち望んでいた瞬間その1がやってきた。「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」である。イントロが鳴った瞬間に大歓声。この曲でここまでの声が上がるのは珍しい。ロングイントロとともに朝日が昇る映像が流れ、まずBABYMETALの3人が2階ステージに姿を現す。そして、その両サイドにPOLYPHIAのTim HensonとScott LePageの姿を見つけると、フロアから歓喜の声が上がった。 ここでのSU-METALの歌唱も特筆すべきものがあった。非常にクリアで、ニュアンスの表現まで明確に聴き取れる歌声。映像とレーザーの切り替えもカッコよく、パフォーマンス、演出ともに過去イチの「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」となった。この曲を完全体で披露するのは「FOX_FEST」が初めて。発表から5年近くのときを経てついにこのときが来たのだ。まさかこの共演が実現するとは思わなかった。“Finally, this day has come!!”と喜びの声を上げたSU-METALは本当にうれしそうだった。 この日一番のどよめきが起こったのは「メタり!! (feat. Tom Morello)」。この曲が発表された昨年夏以降は必ず披露されているといってもいいぐらい定番化していて、特に珍しい楽曲ではないのだけど、この和物イントロには思わず声を上げたくなるような魅力がある。しかし、実際に声を上げて驚いたのは間奏だ。MOMOMETALが“Everybody, get low.”とフロアに向かってしゃがむように促したのだ。MOMOMETALがこういった指示するのは初めてのこと。 さらに、MOAMETALが“I(正しくはShe) said, get low.”と追い打ちをかけた。そして、フロアが全員しゃがんだのを確認して、MOMOMETALによる恒例のJ-RAPパートがはじまる。その様子をうれしそうに眺めるSU-METALとMOAMETAL。“Are you ready?”と彼女のグロウルが地を這うと、バンドインととともにおびただしい数のレーザーが宙を貫いた。この瞬間がしびれるぐらいカッコよかった。BABYMETALのライブには定番曲が多く存在するが、メンバーのパフォーマンスも、演出も、つねに進化を続けている。「メギツネ」も映像演出に変化が加わっていた。 そして、ついにあの曲のイントロが鳴ったのだった。みんなが待ち望んでいた瞬間その2、ELECTRIC CALLBOYとのコラボ曲「RATATATA」である。イントロが鳴った瞬間に大歓声が上がり、大ハンドクラップが沸き起こる。そして、自然発生的に「フゥフゥ!」という声もあちこちから上がった。 そんな大盛り上がりなフロアに迎えられたBABYMETALの3人、そしてそのあとに現れたELECTRIC CALLBOYのKevin RatajczakとNico Sallachの2人は、クールなアイソレーションにはじまり、ひたすら楽しいパフォーマンスを展開。曲の最後は5人でハグ。こんなにハッピーな曲もなかなかない。BABYMETALというユニットが持つ楽しさがさらにブーストした瞬間だった。 面白かったのは新たなパーティーチューンによる興奮が冷めやらぬ中でプレイした「ギミチョコ!!」だ。この大ヒット曲からいつも以上の重さや生々しさを感じたのだ。これは間違いなく「RATATATA」との対比によって呼び覚まされた感覚。それにしても、ラスト曲の前に「ギミチョコ!!」がくるのはかなり珍しい。もしかしたらBABYMETALのライブ史上初めてではないだろうか。 ラストは「Road of Resistance」。実は、「FOX_FEST」は「BABYMETAL WORLD TOUR 2024」に含まれているライブだ。お祭りではあるけど、3人の新たな戦いはすでにはじまっている。曲中、スクリーンに大写しになったSU-METALの真剣な表情がそれを物語っていた。この曲では後半でシンガロングをするのが恒例となっているが、この日、3人はいつも以上に観客にシンガロングを求めた。それが自分たちの力になると言わんばかりの熱さだった。 最後、SU-METALは出演者と観客へ向けて感謝を述べ、さらに彼女はこう続けた。「みんなのおかげで最高の2日間になりました、ありがとうございます! もし第2弾が開催されることがありましたら、そのときにお会いしましょう!」 主催として大変なことは本当に多々あると思う。自身も世界中を駆け回る中、ひとつのフェスを遂行するのは至難の業だということも容易に想像できる。しかし、我々はもう「FOX_FEST」を知ってしまった。世界中のどのメタルフェスとも似ていないこの異端なフェスをもっと観たいという気持ちは抑えられない。毎年とは言わないが(実際は言いたい)、せめて2年に一度は日本のメタルファンにこの楽しい時間を提供してもらえないだろうか。それぐらい満足度の高いメタルフェスだった。 取材・文=阿刀大志