背景に「2000人の消えた赤ちゃん」問題…韓国で「内密出産」認める新法が施行 孤立出産と乳児遺棄を防ぐ
●法施行後1カ月で、419件の相談電話
ーー法律では、まずは孤立出産や乳児遺棄を防ぐことを重視しています。妊娠に悩む女性と地域相談機関とをつなげるために、女性に情報をどう届けるのでしょうか。 「大事なことは『敷居の低さ』です。悩んでいる女性たちには『本当に相談していいんだ』という安心感を持ってもらわなければなりません。ベビーボックスにあれほど多くの人が集まったのは安心感を提供したからだと思います。 女性たちとつながれるように、『危機妊娠保護出産法』の施行とともに、『危機妊産婦相談電話1308』を開始しました。相談電話の広報のために、薬局にポスター、リーフレット、シールを配布しているところです。 法施行後1か月間で、『1308』に419件の相談電話が寄せられ、16人が保護出産を申請し1人が撤回した状況です。産前・産後の支援は、16カ所の地域相談機関が行いますが、このうち14カ所はこれまで妊娠期支援を担ってきた施設なので、たとえ保護出産を申請したとしても、その後の女性の揺れ動く心境に寄り添いながら丁寧に支援していくという、これまで培われてきた支援のノウハウが十分に生かされることが期待されています」
●相談の敷居を低く、本人に届く支援体制を整える
ーー日本では2022年に厚生労働省と法務省が内密出産のガイドラインを公表しましたが、法制化には至っていません。 「韓国のベビーボックスや保護出産は赤ちゃんの命を救うことを第一に考えています。『消えた赤ちゃん問題』が、明らかになったとき、韓国では法制化を求めて、世論が高まりました。 もちろん保護出産制度で全てが解決するわけではありません。日本でも全国的に妊娠相談窓口が増えている状況で、2022年の児童福祉法改正では『困難を抱える妊産婦等に一時的な住居や食事提供、その後の養育等に係る情報提供等を行う事業』が創設されました。 今後も、赤ちゃんの命を守り、予期せぬ妊娠で悩む女性の状況に目を向け、相談の敷居を低く、本人に届く支援を整えていく必要があると思います。そうしながら、さらにどんな制度が必要なのか国民が議論を重ねていくことが求められます」