ヒットメーカー佐久間宣行さんにとっての最大の失敗体験とは? 「周囲には気づかれていませんが」
大学時代の苦い思い出とは
早稲田大学時代にも苦い経験があった。 「僕は福島県いわき市出身で、東京でいろいろなものを見たいと思って大学に入りましたが、1年目は生田にあるいわき市の寮で生活していました。都内から遠かったため、2年生になってから杉並で一人暮らしを始め、芝居ばかり見て大学にほとんど行かなくなってしまったんです。1・2年生の時は広告研究会に所属していて、学園祭のステージを立てるために数百万円集めるという仕事を任されたんですが、それが大変で、営業のために名刺を持って企業を回りました。この役目をやらされる人は留年するのが恒例だったんですが、僕も例に漏れず留年しました」 若い世代には失敗を恐れずに挑戦してほしいとエールを送る。 「今の若い人たちは、目標とする人がいないことに悩むことがあるかもしれませんが、目標は一人に絞らなくてもいいと思います。それぞれの人のいい部分を見つけて、それが自分にどう役立つかを考えれば、自分の理想のキャリアが自然と見えてきます。そして、それを夢から目標に落とし込んで、具体的に何をすべきか考えればいいんです」 佐久間さんはテレビが好きだが、面白いものを作る場所が必ずしもテレビである必要はないとも感じている。 「30代半ばから40代にかけて、そう感じるようになりました。だからこそ、さまざまなジャンルの知識や経験を積むことが大事だと考えました。ゴールデンタイムの番組でずっと仕事をすることが自分の幸せではないと気づいた時、自分がやらなくていいことも見えてきました。自分の人生の決定権を取り戻すことが重要だと思っています」 現在のテレビ業界についても、こう見ている。 「業界全体としてはユーザーにとって不便で、権利処理が煩雑、テレビだけでは稼ぎづらくなっていると感じます。ディレクターのギャラも昔に比べて半分、あるいは4分の1に減っていることもあります。その点、Netflixなどの配信プラットフォームは制作費が高いですが、失敗したら終わりです。僕は『トークサバイバー!』でシーズン3までやらせてもらっていますが、それは稀だと思います」 それでも、彼の仕事に対する姿勢は一貫している。 「面白いものを作って、人に『面白い』と言われ、僕が面白いと思う人たちがチャンスを掴むきっかけを作れたらと思っています。最終的には、僕が好きなものが世の中に溢れるような仕事ができれば、それが一番の幸せですね」。佐久間さんは常に挑戦を続け、失敗から学びを得て、自分自身の成長につなげている。 ■佐久間宣行(さくま・のぶゆき)1975年11月23日、福島県いわき市生まれ。テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティー。『ゴッドタン』『あちこちオードリー』『トークサバイバー』などのテレビ番組、配信作品を手がける。元テレビ東京社員。2019年4月からラジオ「佐久間宣行のオールナイトニッポン0」のパーソナリティーを担当。YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」は登録者数224万人を突破(24年9月現在)。著書に『佐久間宣行のずるい仕事術』(ダイヤモンド社)などがある。
平辻哲也