後期高齢者医療の保険料が「2024年度」値上げへ。年金収入200万円での負担を試算
2023年5月12日、衆議院で健康保険法改正案(全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律)が議決されました。 【グラフで現役世代と高齢者の負担増加を比較】現役世代の負担感は高まる一方。2022年は2008年の1.7倍に 改正によって、75歳以上の人(以下、後期高齢者)が加入する後期高齢者医療保険の保険料がアップします。 本記事では、2024年度から実施される後期高齢者医療保険の保険料アップについて解説します。 男性の厚生年金の平均年額である200万円の人の保険料も紹介しますので、今後の家計収支を考えるときに役立てて下さい。 ※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
後期高齢者医療保険見直しの背景
後期高齢者医療保険の保険料見直しの背景には、後期高齢者の増加などによる医療保険財政の逼迫があります。 後期高齢者の医療給付費(自己負担分を除く費用)は、後期高齢者が支払う保険料だけでなく公費(国や地方自治体)や現役世代からの「後期高齢者支援金」で賄われています。 それぞれの負担割合は、公費が5割、後期高齢者支援金が4割、後期高齢者の保険料が1割です。 後期高齢者の医療給付が増える中、現役世代の負担感は高まっています。 2008年から2022年までの1人あたりの保険料の上昇率を比較すると、後期高齢者は保険料が1.2倍になったのに対して現役世代の後期高齢者支援金は1.7倍という状況です。 現役世代の不公平感や負担感を抑えつつ、増え続ける医療給付費を賄うために、後期高齢者医療保険の見直しが行われました。 また、子育てを社会全体で支援するという観点から、出産育児一時金の費用を後期高齢者医療保険制度から拠出する方向で検討されています。
後期高齢者医療保険の保険料の値上げ
後期高齢者医療保険の保険料は2024年度から値上げの方向ですが、後期高齢者全員の保険料がアップするわけではありません。 保険料見直しの方向性と、年収別の保険料の変化について説明します。 ●後期高齢者医療保険の保険料見直しの方向性 後期高齢者医療保険の保険料は、次の2点を基本に見直しされます。 ・現役世代と後期高齢者の1人当たりの負担額の伸び率を同じにする ・負担能力のある人に保険料を負担してもらう 現役世代の負担を抑えるために、後期高齢者の保険料も現役世代と同じペースでアップします。 医療給付を受ける後期高齢者にも、一定の負担をしてもらうことになります。 負担能力のある人とは、所得の多い人のことです。 つまり、所得の多い人は保険料を高くして、所得の少ない人は保険料を据え置く(または値上げを抑える)ことになります。 ●年収別の保険料値上げ 厚生労働省の「医療保険制度改革について」によると、2024年の後期高齢者医療保険の保険料は年収別に次の通りです。 保険料がアップするのは、年収が153万円を超える人です。 年収が高くなるほど保険料のアップ率も高くなります。 また、保険料の上限が2024年度は60万円から73万円に、2025年度は80万円にアップします。 収入が年金のみで平均的な厚生年金の男性受給者(年金額約200万円)は、2025年に年間で約4000円保険料が上がります。