難病「FOP」原因のたんぱく質を解明…京大iPS細胞研究所「進行防げる可能性」
筋肉の中に本来ないはずの骨ができる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」で、骨のもとになる細胞を増やしているたんぱく質を突き止めたと、京都大iPS細胞研究所などの研究チームが発表した。早い段階でこの細胞の増殖を抑えることができれば、治療につながる可能性があるという。論文が4日、国際科学誌に掲載される。 【図】医療費が月額1000万円以上になった延べ人数、このように推移している
FOPは特定の遺伝子の変異によって発症し、国内の患者数が推定約80人とされる極めてまれな病気だ。進行の初期には、筋肉の傷ついた場所にこぶのようなものができ、腫れや痛みなどが生じる。進行するとこぶの内部に骨ができ、元には戻らない。
京都大の池谷真(いけやまこと)准教授(幹細胞生物学)らは、患者から遺伝子に変異があるiPS細胞(人工多能性幹細胞)と、その変異を修復したiPS細胞を作製。さらに、それぞれ骨や軟骨のもとになる間質細胞へ変化させて比較した。その結果、遺伝子変異がある間質細胞は「BMP―9」というたんぱく質があると活発に増殖することがわかった。
FOPを発症させたマウスで、遺伝子操作でBMP―9をできなくすると、筋肉が傷ついても骨はできにくくなった。
池谷准教授は「筋肉が傷つく初期段階でBMP―9の働きを抑えれば、病気の進行を防げる可能性がある。治療の選択肢になれば」としている。
FOPに詳しい国立障害者リハビリテーションセンターの芳賀信彦総長の話「骨化の初期段階を見極めるのが難しいが、患者は転倒などがきっかけで骨の形成につながるため、そうした場合には予防的な治療が可能になるかもしれない。ハードルは高いが、実用化を期待したい」