「タモンズは終わりや」から5年…再起誓ったネタでTHE SECONDファイナル進出「今が一番“漫才”してる」
再スタート切ったネタで、大舞台へ
ーーーそしてタモンズとして再スタートを切ったわけですね 安部:僕が腹を括ったというか…1回トリオになるって決まってたのを「やっぱ嫌や」って言い出したのは僕なんで。大波がやりたい漫才に全ベットしよう、って決めたんですよね。 僕が「大波の言う通り、全部もう振り切って、大波がやりたいことをやろう」って言ったら、大波が「それやったらやろか」って言ってくれたんで、 ネタに対するモチベーションがちょっと変わりました。 振り返ればコンビを組んですぐの何も考えてない頃って、二人でアイデア出し合って、ケラケラ笑いながらネタを作ってたんです。でも2012、13年に僕らが「THE MANZAI」でちょっと上に行った時に厳しい現実を突きつけられて「このままじゃ勝てへんのや」となりました。 で、大波がお笑いにしっかりと向き合うようになってくれて、大波主導で色々ネタをやるようになった。でも僕がそれについていけなくて、僕だけどこか同級生ノリのままでやっちゃってたんだと思います。そう自覚できたからこそ、トリオになりかけた時に「ここで腹くくらなあかん」という気持ちになりました。 ーーー大波さんとしては、トリオとして色々構想していたことも捨ててタモンズに戻ったわけですが… 大波:そうですね。僕はトリオになる騒動の前の辛かった時期にやってたネタとかが全然好きじゃなかったんですよ。昔憧れていたお笑い芸人の像と自分がやってるネタがかけ離れてるのが嫌で…。ウケる、ウケへん以前に自分が納得できるお笑いができなかったことでフラストレーションがたまってたんですけど、(安部さんが)「全部任せる。大波が好きなことやっていい」って言ってくれたんで。そこからM-1にはあと2回しか出られなかったけど「頑張ろう」って、真剣にネタ作り以外の部分も色々やったんですけど、2年では届かずで…。 で、その当時再スタートしてから最初に作ったネタで今回、THE SECONDファイナル出場が決まったんです(※ファイナルのザ・パンチ戦でも披露した「誕生日プレゼント」のネタ)。二人でもう一回やろう、ってなった次のM-1準々決勝で落とされて、納得いってなかったネタです。僕の中ではすごい…なんていうんですか、「メモリアルな漫才」というか。 もちろん当時から変えた部分は多いですけどね。もう1回がっちりスクラム組んで、お互い納得して作ったから、思い入れがあります。タモンズが地に落ちてた時期に「あ、やれるんちゃうかな」「もう1回戦えるんちゃうかな」って思えたネタで、ファイナル行けたのはうれしかったですね。 ーーータモンズが再スタートした2019年から、THE SECONDファイナル進出を果たした2024年までというのは、漫才師としての技術に磨きがかかった期間、という感じですか 安部:というか、「自由にやろう」になったかもしれないですね。それまでは、僕が大波のネタをいかに上手く乗りこなせれるか、ていう勝負でもあったので、大波から「ここはこう言ってほしい」「このタイミングで」みたいな注文が結構あったんですよ。僕はそういうことを結構感覚でやってしまってたんですけど、再スタートしてからは「ここはこうやから、こういう言い方で言わなあかんのや」とか、学びました。漫才の基礎をちゃんと考えるようになったっていうか…めっちゃ遅いんですけど。 で、全国ツアーを回るようになってからは、そういう風に蓄積してきたことに加えて、お客さんの反応を見ながら自分の感覚で臨機応変に変えてみて、ということをやっていました。本来なかったくだりを足してみたりとか、逆にここは深追いしてもウケないという所は本(台本)にあってもやらない、とか。結構自由に「習うより慣れろ」でやっていった感じです。 ーーー大波さんはいかがですか 大波:M-1のラスト2年とかは、僕が結構(安部さんに)言ってたと思うんですけど、最近はそんなにないです。人に何かを伝えるための喋り方とか理解して、自分のものにしてくれたと思います。 何か、振り返るとM-1ってやっぱりちょっと独特で。僕の感覚では漫才じゃないっていう感覚なんですけど。なんか、作品を発表するっていう感じかな。でも、今僕らがやってるのは「漫才」なんで…ニュアンスですけど。今もネタを作って漫才をやるんですけど、「そんなことは二の次」というか。面白いネタを作る、ってことがM-1の時が「10」やったとしたら。今は感覚的に「2」とか「3」ぐらいです。 ーーーそんなに減りましたか 大波:減りました。例えば舞台に出ていって椅子が置かれてたら、M-1やってたらイジってないと思うんです。でも、イジらないと嘘じゃないですか(笑)。とか、例えばお客さんが全員外国人やった場合でも、 M-1やったらそのままネタやってるけど、今やったらまずそこを処理すると思いますし。「ネタ中に行けるとこあったらそこ行く」って頭になってるし、それが漫才やと僕は思ってるので。だから、ネタ前に僕がアベさんに何かを伝えるよりも、終わってから振り返ることが増えた気がします。 安部:「あそこはこっち行ってたらウケてたんちゃう?」とか「ちょっとあそこは追わんでよかったんちゃうか」っていう反省会みたいな感じですね。 大波:ネタ合わせをすることにあんまり意味がなくなったというか…。「1番ウケやすい言い方はこれ」っていうのは間違いなくあるんですけど、それはあくまで統計的なものでしかなくて。すっごいレアパターンが起こる時もある。そのレアパターンに対応できた時の方が「漫才師やなぁ」って感じるかもしれないです。