坂東龍汰 ドラマ「ライオンの隠れ家」好演でブレークも葛藤 「何がみっくんで坂東なのか分かんなくなってます」
俳優・坂東龍汰(27)が存在感を放っている。放送中のTBS系ドラマ「ライオンの隠れ家」(金曜、後10・00)では主演の柳楽優弥演じる主人公の弟で、自閉スペクトラム症の青年・美路人(みちと)を好演。17年のデビューから出演作が途切れることなく躍進を続けるが「じわじわ行きたい」と先を見据える。米ニューヨークに生まれ、3歳からは北海道で自給自足の生活をしていた幼少期を経て「日本のティモシー・シャラメ」を目指すブレーク必至俳優のユニークな素顔に迫った。 【写真】「何がみっくんで坂東なのか分かんなくなってます」雰囲気ありすぎ! 6日に第9話の放送を控え、ヤマ場を迎えている「ライオンの隠れ家」。ヒューマンサスペンスとして息をのむ展開が増す一方、坂東演じる美路人の和やかなキャラクター性が、SNSを中心に話題沸騰している。 自身も「結構すごい反響もらってます!ありがたいです!頑張ります!」と満面の笑み。街中でも「今まではほとんど気付かれなかったけど『あ、みっくんだ』って結構気付かれるようになった」といい、役を通じての知名度の上昇を実感している。 多角的に役作りに努めた。今作で「自閉スペクトラム症」の監修を行う、発達障害の子供らのための学習塾「さくらんぼ教室」の生徒と触れ合ったほか、自身同様の役が登場する映画「レインマン」からも着想を得たという。 「みっくんは僕の普段のスピードとは違う話し方をするので、お会いした方々との時間をもとに、自分が見たものと聞いたものを練習しました」 一方、準備期間を含め約5カ月間にわたり役に向き合い続けた結果、ある種の葛藤を生んだ。「何がみっくんで坂東なのか分かんなくなってますね。プライベートで会う人に普通に話してるつもりでも『今みっくん出てた』とか言われる。(役が)抜けるのかな」と笑った。 ユニークな家庭環境で育った。父は映画監督を夢見て渡米した歯科技工士。母は陶芸家で、坂東は米ニューヨークで生まれた。そして3歳の頃、父が「自給自足の生活」を求めたことで、北海道に移住した。 家も父の手作り。当初は「プレハブにまきストーブをぶちこんで、断熱材を壁に貼りまくって3年ぐらい耐えた。その間に(父が)2階建ての家を横に建てた」という。 芝居に初めて触れたのは小学4年生の時。「芸術活動」を中心とした授業を行う「シュタイナー教育」を実践する一貫校での授業だった。 姉が通っていたことから演劇塾にも通い始めたが、当時は「目立ちたがり屋ではいたけど、人前に立つのが大嫌いだった」という。だが演劇に触れるたびにのめり込んだ。 進路を決める上で「勉強が大嫌いだったので大学は選択肢になかった」と苦笑いし「物を作ったり表現する方に進みたいってなって(高校の)卒業演劇をきっかけに役者やりたいって決めました」と振り返った。 俳優を目指し上京するため、旅館で約2年、住み込み働きも経験。目標の100万を余裕で上回る資金をためたが、その経験が「すごく良かった」という。「生活を全部バイトに使うスケジュールじゃなくて、事務所を探したり自分のやりたいことに使えた。東京って生きるだけでも高いじゃないですか」。準備の分、夢実現への時間に費やせた。 だが、道のりは決して平らではなく「全然事務所が決まらなくて、諦めて北海道帰ろうかなと思ってた」と諦めかけた。そんな時、同じくシュタイナー教育で育ち、SNSで交流があった俳優・村上虹郎に相談したことが運命を変えた。 「メッセージを送って渋谷のコーヒー店に行って『(俳優)やりたいんか』、『はい』みたいな(笑)」 村上の助言を経て、現在の事務所への所属が決定し、20歳でデビュー。そこから7年。23年は9作、今年も8作品と多くの作品に出演を続けている。順調な上昇曲線を描くが、ブレークの実感は「全然ない」といい、続けた。 「もちろん役者を続けていく上で売れたいとか思うけど、その役をどうすてきに作品の中で生きてもらうか考えてる時間の方が圧倒的に長い」 目の前にある役に全力で取り組むことが大前提と真剣にうなずく。表情はクルクル変わる。続けて「なので、じわじわ、行きたい」と本音を吐露し、笑いを誘った。 演技のお手本を問えば「ティモシー・シャラメですかね」とハリウッド俳優の名を挙げる。「世界的スターですけど…」と前置きし「いつかは日本のティモシー・シャラメって言ってもらえるように…。まあ頑張ればね、同じ土俵ですから。とか言って!」と今度はおちゃらけ、声を出して爆笑した。 ただ「ライオン-」が転機だということははっきりと自覚している。「この役をきっかけにステップアップできたらなと思うし、チャンスを逃さないようにしたい」。坂東にしか出せない色で、自らのキャリアを染め上げていく。 ◇坂東 龍汰(ばんどう・りょうた)1997年5月24日、米ニューヨーク生まれ。北海道出身。2017年、ドラマ「セトウツミ」で俳優デビュー。ドラマ「真犯人フラグ」や映画「犬鳴村」など出演作多数。23年、初主演映画「フタリノセカイ」で第32回日本映画批評家大賞新人男優賞受賞。「シュタイナー教育」を実践する幼稚園から高校までの一貫校の授業などで演劇に触れたことで俳優を志す。趣味は写真撮影、油絵、ボクシング、特技は社交ダンスなど。身長175センチ。血液型O。