そもそも「骨太の方針」とは?歳出削減の小泉政権からAIやiDeCoなど成長戦略「ぜんぶ盛り」岸田政権へ、変化の軌跡
■ 安倍政権は「美しい国」を強調 初期の骨太は、現在と異なり「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」という名称だった。名称に「構造改革」という文言が入っていることからも分かるように、官の構造改革、予算の削減に主眼を置いたものだった。 小泉政権が2001年に策定した初代の骨太は、公共投資や国立大学の運営手法、地方財政の仕組みを疑問視している。その後、公共投資の大幅削減、国立大学法人化、財政力の乏しい地方自治体に国が配分する交付金「地方交付税」(税と付くが、実態は交付金)の削減など、小泉改革が断行された。 第1次安倍政権策定の2007年版では、「経済財政改革の基本方針」と現在の名称に変更され、ページ数も増え、副題も付け始めた。2007年版の副題は、「『美しい国』へのシナリオ」だった。再チャレンジ支援、教育再生など、第1次安倍政権のキーワードが盛り込まれている。 その後、福田、麻生政権を経て、2009年に民主党に政権交代すると、経済財政諮問会議が休止状態に陥った。2010~2012年の骨太は内閣府のHPには残されていない。2012年末に自民党が政権を奪取すると、第2次安倍政権が2013年に骨太を策定した。 2013年以降の骨太で目を引くのが、民間企業の成長支援のウェイトが上がったことだ。一言で「民間企業の成長支援」と言っても、第2次安倍政権初期は、コーポレートガバナンス改革やTPP(環太平洋パートナーシップ)協定交渉の推進など、制度改革による支援が中心だったのが、次第に、中堅・中小企業・小規模事業者の収益力向上や、科学技術・イノベーションの推進といった予算措置型の記述が増えてきた。同時にページ数は膨脹し続けた。 新型コロナウイルスに見舞われた2020年版こそページ数は減ったが、その後の菅政権、今日の岸田内閣でも、財政措置型の記述が目立つ。 岸田政権が策定したこの3年間では年々ページ数が増えている。2023年版の副題は「加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」。副題に副題が付いており、政権としての優先事項が分かりにくい。歳出削減を明確に打ち出した初代骨太から23年が経ち、様相はがらりと変わっている。
種市 房子