そもそも「骨太の方針」とは?歳出削減の小泉政権からAIやiDeCoなど成長戦略「ぜんぶ盛り」岸田政権へ、変化の軌跡
■ 財務省の主戦場は「財政規律」の記述 現在の骨太は大きく、財政・経済運営全体のデザインを描く総論部分と、推進政策を並べた各論部分の2つに分かれる。 総論では、次年度予算編成の考え方や今後数年間の財政運営方針を記述している。中でも毎年メディアが注目するのは国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)だ。 2024年原版では「2025年度の黒字化を目指す」と明記した。PBは、政策に充てる経費(歳出)を、税収や国からの交付金など(収入)で賄えているかを示す指標だ。借金なしで政策を運営できるかを示すもので、従来は、財政規律を保つために骨太に黒字化目標を盛り込んでいた。 ただ、コロナ対策の緊急財政出動が必要とされたことや、自民党の積極財政派にも配慮して、2022~2023年版には目標を盛り込んでいなかった。2024年に、3年ぶりに記述が復活する見通しだ。 PB目標の明記は財政規律主義の財務省の悲願とも言える。財務省は予算査定官庁であり、持ち込まれた予算をいかに削減するかが人事評価の大きなポイントとなる。 与党の財政規律重視派の議員や財務省担当記者に「ご説明」を繰り返し、支持を取り付けて、与党内の積極財政派と水面下で対峙している。2024年版は、原案段階では財務省の意向が反映された形だが、最終版に与党の積極財政派の意見がどの程度反映されるのかも注目点だ。 総論が財務省の主戦場ならば、各官庁の主戦場は政策各論だ。公的・民間双方のセクターで推進するべき政策が並ぶ。具体的に2024年の原案ではどうか。
■ 世の中のブームには予算が付く 2024年原案では、先ほど述べたようにDX、GXなどの民間セクターの成長戦略とともに、デジタル行財政改革や防災・減災などの公的セクターの推進政策が並ぶ。 対象産業は、エネルギー、通信、半導体、金融、防衛産業、ロボット、ファクトリーオートメーション、証券、建設と際限がなく、政治家と官僚が思いつく成長戦略をすべて盛り込んだようにも見える。 霞が関では、世の中のブームをキーワードに掲げた政策には予算が付きやすいという事情もある。 ただし、こうした成長戦略は、岸田首相の肝いりで官邸に設置した、官民の「新しい資本主義実現会議」で議論している実行計画改定版の原案にも出ている。実行計画原案にはDX、半導体、AI、GX、資産運用立国などの記述がずらりと並ぶ。 実行計画も2025年度予算策定に向けて、重要な根拠となる。実行計画が成長戦略をより詳細には記述しているという建付けはあるものの、骨太と内容が重複しており、一般人にはすみ分けが理解しにくい。 骨太にはその時々の政権の意向が強く反映される。それでは、骨太はこれまでどのように変化してきたのだろうか。