フジトランスコーポレーションのハノイ支店が入るビル（同社提供）

　中部地方の物流各社が、相次ぎ海外事業の拡大に乗り出している。特に自由貿易化が加速する東南アジア諸国連合（ＡＳＥＡＮ）とその周辺国での投資が目立つ。中国の経済成長が鈍化する中、中国以外の国・地域にも分散投資を進める「チャイナ・プラス・ワン」戦略の取り組みが今後も増えそうだ。 　「コロナ禍後も取扱量は堅調。ＡＳＥＡＮ域内物流を一気通貫で担えることを売りに、事業を拡大したい」―。フジトランスコーポレーション（本社名古屋市）海外拠点担当の河野友紀取締役は意気込む。 　同社は５月、ベトナム現地法人の事業拡大に向け、ハノイに支店を開設した。ベトナム南部にあるホーチミン本社に加え、北部のハノイにも拠点を設けることで国内南北間の物流ニーズを取り込む。 　ハノイ支店は、ハノイ市内のビルに設置した。同社によると、ハノイには自動車関連を含む日系メーカーの取引先が多く立地し、引き合いもあるという。 　ベトナムでは１００％出資の現地法人を18年に設立。輸送の手配を行うフォワーディング事業などを展開してきた。19年には南部のロンアン工業団地に、輸出入用の自動車を保管するモータープールを新設し、出荷前検査なども手掛ける。

　同社は13年以降、ミャンマーやインドネシア、カンボジア、ベトナムなどＡＳＥＡＮ域内に相次いで現地法人を設立。ＡＳＥＡＮ域内では自由貿易化が加速していることから、物流ネットワークを張り巡らせ需要に対応する。24年３月期の連結ベースの海外売上高比率は２割超で、今後も高まる見通しだ。 タイで増設 　総合物流業の日本トランスシティ（本社四日市市）は25年１月の完成予定で、タイで倉庫を増設する。自動車部品や合成樹脂などを取り扱うタイ現地法人の物流事業を強化する狙いだ。 　タイ東部ラヨーン県のアマタシティー工業団地にある既存４棟の倉庫のうち、１棟を拡張する。新倉庫の延べ床面積は６２７１平方メートル。投資額は約５億３千万円を見込む。 　同社では「タイは重要な拠点。同時に海外投資について現在、計画中の案件もある」（総務部）と海外事業をさらに拡大する考え。 プラスシックス 　「ＡＳＥＡＮプラス６」と言われるインドで事業を拡大する動きも。セイノーホールディングス（ＨＤ、本社大垣市）は５月、インドの大手物流業者であるマヒンドラ　ロジスティクスと共同で合弁会社を設立すると発表した。

　セイノーＨＤはタイやインドネシアに現地法人を持ち、東南アジアで海外事業を展開してきたが、インドでの輸送事業は初めて。日系自動車企業向けの現地物流ネットワークを構築する狙い。事業開始日は10月１日の予定。 　田口義隆社長は「今回の提携により、インド国内の日系企業に包括的な物流ソリューションを提供できる」とコメントしている。 　東南アジアを中心に物流企業の海外投資が相次いでいることについて、証券会社のアナリストは「内部留保は投資や還元に回すよう投資家圧力が強まる中、国内の荷動きは鈍化している。安定的な需要が見込まれる海外に投資することが最適と判断しているのではないか」と話している。