「一期一会」の理解度にマネジャーの実力差が出る できる上司は自然とやっている仕事依頼のコツ
■部下への依頼も「一期一会」の精神で そう考えると、部下を指導する際も「一期一会」の教えをしっかりと意識すべきだろう。部下と接する1回、1回を「二度とない大切な時間」として捉えるのだ。 しかし、「一期一会」をまったく意識していないマネジャーは、部下への依頼一つをとってもその態度は表れる。 たとえば、 「わからないなりにやってみて」 「まずは、自分で考えて手を動かして」 こんな曖昧な表現を使うマネジャーがいるが、これはマズい。すべての機会を大切にする「一期一会」の教えに背いていることになる。部下の立場からすれば、どう取り組むことでマネジャーが求める成果を出せるのか無駄に迷うことになり、結果的に「タイパが悪い」指示だと受け止められるだろう。
これは「ダメだし文化」に染まってきた昭和世代の悪しき伝統だ。相手よりも自分のほうが優位だということをわからせるために、 「何事もまずは経験だ」 と言ってやり方を教えず「とりあえずやってみろ」「まずは手を動かせ」と指示をする。そして失敗させ、一度恥をかかせてから、上から目線で仕事を教えるというやり方だ。 「私が新入社員だった頃は、いきなりお客様のところへ行かされたもんだ。上司は何も教えてくれなかった。泣きそうになりながらお客様をまわったんだぞ」
「だけど、あの修業時代があったから、今の私がある」 こんなエピソードトークをする上司の気持ちを、私もわからないでもない。バブル全盛期に社会人になった「昭和ど真ん中世代」だからだ。 とはいえ、このような理不尽な修業時代は、ないほうがいいに決まっている。自分が苦労したからといって、若い部下にも同じ経験をさせる必要はないのだ。 ■仕事を依頼する「前」にすべきたった一つのこと 大事なことは部下と一緒に「見通し」を立てることだ。特に経験の浅い部下を持つ場合は、
「とりあえずやれ」 ではなく、 「一緒に仕事の見通しを立てよう」 と声をかけるのだ。 「見通し」とは、物事の進展や将来を予測すること。具体的には、「始めから終わりまで」を明確に見通せるようにすることだ。 たとえば、分析の仕事を依頼する場合、どのようなパラメータが重要か、それをどう分析し、結果をどうまとめるかという点を、部下に問いかけることで明確化させるのだ。 急かさず、否定せず、丁寧にやろう。困ったときには、掘り下げる質問を繰り返してみる。