サングラス「レイバン」や「オークリー」を展開、世界最大の眼鏡メーカーがニコンの株を買い増しする理由
こうした関係や最近の日本企業への相次ぐ出資・買収案件を鑑みると、エシロール・ルックスオティカのニコン本体への新たな出資は日本での眼鏡事業のさらなる強化策の一環とみえる。だが、それだけではなさそうだ。 ■アクティビスト対策との見方も ニコンに対しては今年4月に英投資ファンドでアクティビスト(物言う株主)として知られるシルチェスターの株式大量保有も判明している。 9月12日に提出された変更報告書によると、株式保有比率は8.17%まで増えている。保有目的については「増配、自己株式の買い入れの頻度または総量、金庫株消却その他資本政策の変更を要求することがある」としている。
ニコンにとって、エシロール・ルックスオティカが長期の安定株主として株式保有比率を上げるなら、結果的にアクティビスト対策になる可能性もあり、渡りに船かもしれない。 ただ時価総額で16兆円を超える欧州の巨大企業は、日本企業では日立製作所やソニーグループに並ぶ規模で、6500億円程度のニコンとは桁違いだ。 ニコン広報は「報告書に記載のある以上の事実関係は把握してない」としているが、今後、エシロールから新たな提案など出資に見合う動きが出る可能性も否めない。
今年4月にニコン社長兼CFOに就いた德成氏は、三菱UFJフィナンシャル・グループでCFOを担ってきた。2023年に発売した著書『CFO思考』(ダイヤモンド社)では「個人であれ、ファンドであれ、株主になっていただくことに『御恩と感謝』を片時も忘れないことは上場企業のCFOとしては当然守るべき原理原則です。(中略)アクティビストファンドとの対話は、最もエキサイティングでやりがいのある仕事です」と述べている。
今後株主との対話をどう進めていくのか。アクティビストと巨艦企業の両社を迎え入れたニコン。そんな中、10月31日には発行済株式総数の8.7%にも及ぶ自己株取得と全株消却予定を発表し、大規模な株主還元を打ち出した。市場での関心は高まるばかりだ。
山下 美沙 :東洋経済 記者