本郷和人『光る君へ』二人の関係が怪しまれる中、道長がまひろしか喜ばなさそうな「紙」を褒美にしたために微妙な空気に。でも決して道長が無頓着だったのではなく…
大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。9月29日の第37話「波紋」では、中宮・彰子(見上愛さん)が一条天皇(塩野瑛久さん)の皇子を出産し、まひろと道長(柄本佑さん)は喜びを分かち合う。そんな二人の親密さがうわさになる中、彰子がまひろの書いた物語を冊子にして天皇への土産にしたいと言いだして――といった話が放送されました。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生が気になるシーンを解説するのが本連載。今回は「平安時代の贈りもの」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし! 『光る君へ』「母上が嫡妻ではなかったせいで!」自慢話で家族をドン引きさせたまひろに娘・賢子が怒るのは当然で…視聴者「成功者の帰省あるある」「不器用だから酒に逃げようと」「8歳で母を失った影響も?」 * * * * * * * ◆道長の褒美 前回のドラマ内にて、中宮彰子は内裏に戻るにあたり、藤式部ことまひろの書いた物語を美しい冊子にして、一条天皇に差し上げたいと考えました。 そこで女房たち総出で、その冊子の準備を進めていると、左大臣・道長が褒美をもって正妻・倫子とともに彰子のもとを訪問。 道長が「皆で分けよ」と持参したその内容は硯と筆、そして紙でした。 道長自身はまひろに喜んでもらえるものと考えたのでしょうか。皆の前で「筆や硯も入用であろう」とまひろに伝えますが、当のまひろは微妙な反応。 それもそのはず、二人の関係は周囲はもちろん、妻・倫子にまで薄々気づかれはじめていて… 時折見せる倫子のかたい表情には恐怖を覚えつつも、来週の展開が楽しみでなりません。
◆平安貴族は何を贈りものとしたか さて、ドラマを見ながら「紙と硯に筆じゃ喜ぶのはまひろだけでしょ? 露骨すぎるというか、無頓着というか、道長ももう少し考えてよ…」なんて思った視聴者の方がいらっしゃったかもしれません。 そこで今回は、あらためて平安貴族が何を<贈り物>としたか、考えてみましょう。 室町時代の武家なら、贈り物には「1に馬、2に刀、3が紙」という感覚がありました。 馬は現在でいう車かな? すごくざっくりではありますが、特に陸奥や信濃の馬は、600万円くらいの高級車、といったイメージ。 そしてこれらの<贈り物>はなじみの質屋に持っていくと、お金に替わるんです。 僕が若い頃までは、お中元・お歳暮で貰う特定の銘柄のウイスキーは現金になってましたね、たしか。 それから良く訓練された鷹は、ブランド馬の更に上。一羽で立派なプレゼントになりました。
【関連記事】
- 『光る君へ』「母上が嫡妻ではなかったせいで!」自慢話で家族をドン引きさせたまひろに娘・賢子が怒るのは当然で…視聴者「成功者の帰省あるある」「不器用だから酒に逃げようと」「8歳で母を失った影響も?」
- 『光る君へ』次回予告。「殿と…ゆっくり過ごしとうございます」と道長に迫る嫡妻・倫子。一方で道長とまひろには距離が。そして憎悪に満ちた表情の伊周は「おまえのせいだ!」と…
- 『光る君へ』彰子も道長も口を開けば「藤式部」。対して倫子の表情は…視聴者「見てて震えた」「娘もダンナも奪われた感じに」「寂しげでいたたまれない…」
- 大河ドラマ『光る君へ』脚本家・大石静「2話目を書き終えた頃に夫が他界。介護と仕事の両立は困難だったが、45年間で一番優しく接した時間だった」【2024年上半期BEST】
- 下重暁子 藤原道長からいじめ抜かれた定子を清少納言は懸命に守ったが…紫式部が日記に<清少納言の悪口>を書き連ねた理由を考える【2024年上半期BEST】