「なぜ抗生剤を出してくれないのか!」発熱した子どもを連れてきた母親がクレーム…小児クリニック医師が開業して「もっとも驚いたこと」
抗生剤を使う場合は理由を説明
なお、念のために言っておくが、細菌感染と診断した場合にはもちろん適切な抗生剤をクリニックでも使っている。待合室には、こういうケースでは抗生剤を使いますと具体例を明記した紙を貼り出してある。 難しいのは、ウイルス感染なのか細菌感染なのかの判別が困難なケースである。発熱が連日続き、気管支炎のような胸の音をしている子がいるとする。肺のX線を撮影しても明らかな肺炎の像はない。血液検査をしても、炎症反応がそれほど強くないと、細菌性肺炎とは断定できない。 本格的な細菌性肺炎に移行するのは何としても防ぎたい。こういう患者さんに抗生剤が有効なのかは相当微妙である。確証はないものの、場合によっては保護者に説明して使ってもらうこともある。 納得していただけることが大半だが、中には「抗生剤を使うことのデメリットは何ですか?」と質問してくる保護者もいる。親として立派な態度だと思う。 確かに、ウイルス感染から始まった風邪は、細菌感染を合併する可能性はゼロではない。では、やはり風邪に抗生剤は有効? しかしこれにはちゃんとデータがある。風邪の患者に抗生剤を投与して肺炎などの細菌感染症を防ぐためには、7000人以上の風邪の患者全員に抗生剤を投与して、やっと1人だけを防げるという。
患者家族にすすめたいこと
いずれにしても、どこに何という菌がいるから抗生剤を使うのか。そのことを患者家族は医師に質問することを強く勧めたい。え、怖くて聞けない? それはちょっとかかりつけ医を替えた方がいいかもしれない。 風邪に対して抗生剤は断固として使わず、しかし、細菌感染があると分かれば必要最小限で適切な抗生剤を使い一発で仕留める。これが信頼できる開業医だ。 ・・・・・ 【つづきを読む】『頭痛に嘔吐、ふつうの風邪と似ているのに…小児科医が最も注意している、命に関わる「症状」と「病気」』
松永 正訓(小児外科医)