タイパ、コスパでは脳を成長・活性化できない…脳科学者・茂木健一郎「脳の変化は習慣的な努力によってのみもたらされる」
誰の人生にもチャンスは前触れなく訪れる。そのチャンスをつかむにはどうすれば良いのか。脳科学者の茂木健一郎氏が、自身の体験を交えながら、「成功するための脳習慣」について綴るーー。みんかぶプレミアム特集「健康情報の本質だけをまとめました」第5回。
脳の変化は習慣的な努力によってのみもたらされる
脳を育む上で習慣は、大切である。毎日続けて、積み重ねることで初めて学びが定着するのだ。 脳の神経回路の変化には、時間がかかる。神経活動のパターンによって神経細胞どうしをつなぐ「シナプス」結合が変化するのだが、その定着にだいたい2週間程度の期間を必要とするのだ。そのメカニズムの詳細はわかっていない部分も多いが、最終的には遺伝子が関与するものと思われる。 脳の変化は、習慣的な努力によってのみ、もたらされる。その意味で、脳は、「動物」というよりは「植物」に似ている。根や枝や葉っぱが、毎日少しずつ変化し、成長するのと同じように、脳の神経回路もまた、習慣的に取り組んでいること、努力していることが「水」や「光」や「養分」となって、神経回路を育んでいくのだ。
脳習慣の効果が出るまで「タイパ」「コスパ」は考えない
このような脳の性質を考えれば、毎日の習慣で脳を成長・活性化させるのがよい。しかし、それがわかっていても実行できないという人も多いだろう。多くの場合、その理由は結果をあまりにも早急に求めすぎるからである。 脳習慣による学びや成長は、「タイパ」とか「コスパ」などといった現代日本の流行語とは遠くかけ離れている。そもそも、脳習慣がその効力を発揮する上では、一般に「待ち時間」が長いということを知らなければならない。生活習慣を通して脳を鍛える上では、その「果実」が得られるまでは多少の時間を待つことになるかもしれないという覚悟を持たなければならないのだ。 待ち時間は、時には数年間、場合によっては数十年間に及ぶ。すぐには効果が出なくても、また目に見える成果がなかったとしても、ほとんど一生に相当する時間、毎日の努力を続けられるかどうかがポイントになるのだ。 著者プロフィール 茂木健一郎 脳科学者。1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。クオリア(感覚の持つ質感)を研究テーマとする。
茂木 健一郎
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