「モデル年金」の基になる世帯構成が見直されると聞きました。何が問題なのでしょうか?
年金の標準的な給付水準として、長く使われてきた「モデル年金」。実態に即していないとの判断から、見直される方向になりました。 本記事で、働き方や世帯構成の変化も確認しながら解説します。
モデル年金とは?
現在、標準的な年金(モデル年金)として示されているのは、1985年に「男性の平均的な賃金で40年間就業した場合の老齢厚生年金+夫婦2人分の老齢基礎年金」と設定された年金額で、妻は厚生年金にまったく加入したことがない専業主婦をモデルとしています(※1)。 2023年度のモデル年金(67歳以下の場合)は、次のとおりです。 〔9万1982円(老齢厚生年金)+6万6250円(老齢基礎年金)×2〕=22万4482円/月 2023年11月の厚生労働省社会保障審議会では、標準的な年金水準は、より多様なライフスタイルを想定して提示することが望ましいとの意見が多く出されました。 たしかに、40年近く前に定義されたモデルですし、男女の働き方も大きく変化してきていることは容易に想像がつきます。では、実際どのような変化が今回の見直し方向につながったのでしょうか。
片働きから共働きへ
現在のモデル年金では「妻の勤労所得」が織り込まれていませんから、この有無が老後の世帯年金額に直結します。図表1はモデル年金のベースとなる片働き世帯数と、共働き世帯数の推移を調べたものです(※2)。
出典:厚生労働省「令和4年版 厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保- 図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移」 1980年に、片働き世帯が1114万世帯、共働き世帯が614万世帯だったものが、2015年には片働き世帯687万世帯、共働き世帯1114万世帯と入れ替わる形となり、その後も差が開き続けています。 このように、すでに30年近く前に世帯数が逆転していたにもかかわらず、老後の標準的なモデル年金額は片働き世帯を使い続けていたということです。 また、国がこのような夫婦の役割分担を推奨していると受け取られかねないことも、今回の見直しの動きにつながったと考えられます。ただ、1985年から継続している指標であることから、長期的に比較可能な数値として今後も算出されることとなっています。