「Zoff」がメガネからサングラスに活路を見出す理由…WBCのヌートバー効果でブランド全体の売上が2桁成長に
メガネ業界にSPA方式(企画から製造、販売までを一貫して行う形態)を取り入れた「Zoff(ゾフ)」。創業20周年の2021年にはリブランディングを敢行し、その運営会社であるインターメスティックの前社長・上野剛史氏からトップを譲り受けたのが上野博史氏である。Zoffは今、メガネを売る企業からのイメージ脱却を図っている。新たに注力しているのがサングラスだ。第二創業期を迎えたZoffの成長戦略や取り組みを上野氏に聞いた。 【画像】Zoffを創業した上野家の3代目社長が語るWBCのヌートバー効果
適正価格を見極めるための眼力を養うファミリー会食
上野氏は2001年のZoff立ち上げ時から、経営者の父(現 インターメスティック 取締役会長)と長男の剛史氏と共に事業の中枢を担っていた。 Zoff下北沢店(1号店)に次いでオープンしたZoff原宿店(2号店)の店長を務め、その後はスーパーバイザーをはじめさまざまな角度から現場を主体として店舗の売上拡大に貢献してきたという。 当時から、Zoffというブランドの成長と共に歩んできたからこそ、2021年に社長交代してからも「事業との向き合い方は本質的に変わらない」と上野氏は述べる。 そんななか、創業家として会社を一から大きくしてきた上野家には、ある文化が根付いているという。 「上野家では定期的に『ファミリー会食』をする習慣があるのですが、そこでは『適正価格』について毎回議論し合うんです。事前に正確な価格は知らされていないため、お店の料理やサービス、ホスピタリティーなどから、『この店の価格はいくらなのか』を当てようと考えるんですよ。 何年も繰り返していくうちに、自然と適正価格を見抜けるような『感覚値』を養うことができました。飲食業界はメガネ業界以上に競争が厳しいなかで、リピートするお店の特徴やプライシング、他店に屈せずに勝ち残っている理由を学ぶために、今でも実践している習慣のひとつですね」(上野氏、以下同)
Zoffがサングラスに注力する理由とは?
Zoffは2021年から「Eye Performance」を掲げ、リブランディングを進めてきた。 メガネを“マイナスをゼロにするもの”から“マイナスをプラスに変える”存在としての価値を見出し、メガネ選びの提案力や訴求力を強化したのだ。 「もっと自由に・楽しく・気軽にメガネをTシャツの様に毎日着替える社会をつくること」 創業当初の原点に立ち返り、新たにブランド戦略を定めたのである。メガネ業界全体の市場規模を見ると、Zoffの創業当時は6000億円程度だったものが、現在は5400億円規模に縮小しており、商品単価も低下している。 それでも、「新たな需要喚起や販売の切り口がつかめれば、市場の伸びしろはまだまだ期待できる」と上野氏は話す。 「メガネを買い替える理由には「なくした、ぼやけた、壊した」の3つがあり、購買周期は3年に一度と言われています。我々はスリープライス(フレーム+レンズ+ケース込みの価格)を設定し、高品質かつ適正価格を打ち出した業界のパイオニアとして市場を牽引してきました。 しかしながら、競合によるビジネスモデルの模倣や会社規模の拡大によるベンチャー精神の欠如も災いして、ブランド本来の遊び心を近年失っていました。最も大きな課題はお客さまの購買マインドを変えることができていないのが一番の課題だと認識しています。その課題を解決するため、紫外線量の増加が危惧される社会環境において、サングラス商材の強化をしていくことが、メガネ以外の購買ニーズを取り込み、さらなる事業の発展に寄与すると考えています」 上野氏によると、既存のメガネという商材だけではショッピングモールに訪れる顧客の1%程度にしかアプローチできないそうだ。 それがサングラスであれば、99%にリーチできる商材になり、収益機会の増大につながるわけである。 「Zoffはおしゃれで低価格なメガネ、“イメチェン”できるメガネという印象が強いですが、サングラス商材の売上シェアは高まりつつあります。いかにメインの商材へと育てていけるかが事業成長の鍵を握ると考えています」