「人生、効率よく歩まねば」という呪い…夫婦揃って「退職→1年半の旅」に出た2人に起きた事
■「いつか行けたら」なんて言っていられない 転機のきっかけとなったのは、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻だ。 「『どこにでも旅行できる時代を生きていると思ってたのに、行けないところが出てくるのか!』と、ショックを受けました。もう、『いつか行けたら』なんて言っていられない。『仕事を辞めて、海外に行かない?』って、妻に話したんです」(拓哉さん) 拓哉さんが「いつかまた海外に行きたい」と話しているのも何度も聞いていた詩歩さんにとって、突拍子もない提案ではなかった。お互いに貯めていた貯金もある。幸い、2人とも「もし帰ってきて、働きたかったら戻ってくればいい」と言ってくれる職場に恵まれたこともあり、旅に出ることを決意した。
2人の旅の目的は、その国の暮らしを知ること。観光もするが、それよりも、行く先々の土地の人が何を食べ、どんなことを話し、どんなふうに働き、暮らしているのかを知りたい。だからこそ、短期間であちこち移動するのではなく、「現地にどっぷりつかってみる」スタイルで旅をすることにした。 たとえば、訪れてみて気に入った土地があったら、長期間滞在してみる。可能ならホームステイをして、暮らしを体験。食事はなるべく、市場で現地の食材を買って自炊。さらに、現地の言葉で会話することが大事だと考え、南米に行く際にはグアテマラで2週間、スペイン語の語学学校に通った。
ルートや予算の計画は、きっちりとは立てなかった。その土地に着いてから、現地の人の話を聞き、3日分くらいの計画を決める。どの土地にどれくらい滞在するか、1カ月後にどの国にいるのかも、わからない。円相場も物価も大きく動いていたため、旅の予算も立てようがない。もともとあった貯金から、帰国後に最低限必要な金額だけ残しておくことを決めていた。 ■価値観を揺さぶる出会い 行く先々でのさまざまな人との出会いは、2人の価値観を大きく揺さぶった。