政府と日銀の共同声明は当面維持の見通し 石破首相には「スタンス変節の疑念」も
石破茂首相が2日夕に追加利上げに否定的な考えを示し、金融緩和の推進を明記した政府と日銀の共同声明（アコード）は当面、維持される見通しとなった。これを受け、3日の金融市場は円安株高で反応した。ただ、市場では衆院解散・総選挙の時期を巡り発言がブレた石破氏に対し「日銀へのスタンスも変節しかねない」との疑念が渦巻く。 「個人的には、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」。首相は2日夕、日銀の植田和男総裁との会談後、記者団にこう語った。一方、植田氏は追加利上げを実施するかどうかを「見極めるための時間は十分にある」と首相に伝えたという。首相と植田氏は、緩和的な金融環境を保ちつつ、次の利上げを慎重に探ることで歩調を合わせた格好だ。 首相が3年ぶりに交代したことで、市場では、政府と日銀の関係性に変化が出てくるのかどうか関心が高まっていた。その象徴となるのが、大規模な金融緩和の根拠となってきた共同声明の取り扱いだ。 共同声明が公表されたのは、第2次安倍晋三政権発足後の平成25年1月。それから12年近くがたって、雇用は大きく改善し、高水準の賃上げが実現するなど経済情勢は好転した。 日銀は3月にマイナス金利政策を解除した後、7月には追加の利上げを決定した。 もともと金融引き締めに積極的とされる石破首相が誕生したことで、日銀に利上げを急がせる可能性もあった。 しかし、首相は市場の想定に反し、金融緩和の継続を容認する発言を繰り返している。 市場はいったんは安堵（あんど）しているが、警戒を解いたわけではない。というのも首相は衆院解散・総選挙の実施時期や金融所得課税を巡り、発言の軌道修正を繰り返しており、「すぐに変節する人」との印象が染みついているからだ。 モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅チーフ・エコノミストは、石破政権下の金融政策について「先行きのスタンスには不確実性は残る」と指摘。来年夏の参院選後のタイミングで「（金融引き締めに積極的な）タカ派的なスタンスにシフトするリスクはあるかもしれない」と分析する。（宇野貴文）
