福島発――こども園+「発達支援」に全国が注目 きっかけは原発事故 「そのままでいいんだよ」…垣根越え“らしさ”に寄り添う『every.特集』
■訓練の後は、友達が待つこども園へ
2時間の利用時間を終えると、今度は同じフロアのこども園に向かいます。廊下を抜けたその先には、たくさんの友達がいました。自然と笑顔があふれます。ブロック遊びをしていると、友達が「大丈夫?やってあげる」と手を貸してくれました。 ここでは1日の中でチャレンジしたり、友情を育んだり、様々な経験を通して成長できているといいます。 ――何が一番楽しい? ゆうりくん 「ぜんぶたのしい」 この日、ゆうりくんは子育て支援センターに来た親子と玉入れ遊び。「ゆうりくん、持つ担当する?」「ゆうくんがかご係?」と声をかけられました。先生に代わって玉を受ける役を引き受け、お兄さんの顔も見せていました。
■子どもを自然にサポートする雰囲気に
施設の中では、発達支援のノウハウをこども園に生かした例も見られます。 朝、こども園にやってきた子どもたちが最初にするのは、出席の記録となるノートにシールを貼ること。次に、かごに入れます。 子どもたちの前には、登園してやることの手順が写真と文字で示されていました。続くのは、カバンをしまうことと、ジャンパーをかけること。上から順に進めることで、迷わず朝の支度をすることができます。 これは発達支援の場で、以前から行われていたやり方でした。こども園や発達支援などの垣根を越えて、子どもをありのままに受け入れ、自然にサポートする雰囲気が広がっているようです。
■部屋を出入りしても止めずに寄り添う
ある日のこども園。みんなで歌っていると、発達支援のスペースを利用する男の子が、突然、部屋に入ってきました。自分で作った切り絵を、こども園のみんなに見せたかったようです。「しょうせいくん、みーせーて」という声が上がりました。 クラスの活動はストップしましたが、先生も子どもたちも気にしません。先生は発達支援に通う子どもが部屋を出入りしても、叱ったり止めたりせず、その子が何をしたいのかに寄り添います。 そうすることで、納得した子ども自身が自然に落ち着きを取り戻すといいます。 児童発達支援アドバイザーの冨森崇さん(臨床心理士) 「子どもたちがどんな『らしさ』があったとしても、この場にいていいっていうか、あなたはそのままでいいんだよっていうメッセージが、そもそもこの建物自体にある」 その子らしさを受け入れてもらえるのは、どの子にとっても生きやすいはずだと、冨森さんは語ります。