眞栄田郷敦×高橋文哉×板垣李光人×桜田ひよりが語る美術の楽しさ 「俳優の仕事と似てる」
美術に対する印象の変化
ーー撮影に参加して、アートや創作活動に対する自身の考え方や感じ方に変化はありましたか? 高橋:絵画に対する印象がガラッと変わりました。これまで学校の美術の授業が最後の記憶くらいで、(アートに)全然触れてこなかったので。でも今回、一枚のキャンバスにこんなに集中できるんだと気づきました。家で描いていても休日1日中やれるくらいやりがいがある。創作は俳優の仕事と似ていて、正解がないんですよね。自分の色を出しやすいものだなと思って、認識も変わっていきました。 眞栄田:俺も原作の八虎みたいにピカソの絵がよく分からなかったんです。でも美術館や展示に行くようになって、ちょっと変わりました。「面白いな」と思えるようになって、見入っちゃいます。 板垣:僕はものづくりに対する考え方が変わりました。ある意味では、入口での「破壊行為」が大切だなって。今までの経験や積み上げてきたものは大切ですけど、時に足かせにもなる。自分の先入観を一度壊して、まっさらな状態から始めることの大切さを、デッサンを1から学んで実感しました。 桜田:絵一つとっても、色の重ね方で印象が変わることを学んでからは、見に行くとそればかり気になっちゃって。「どうやって重ねたらこんな色になるんだろう」とか、「こんな立体的に見えるのはこんな色塗りをしてるからなんだな」とか。そういうことをすごく考えるようになって、より一層絵と楽しく向き合えるようになりました。
『ブルーピリオド』で最も好きな絵は?
ーー映画の中では原作に登場する絵をベースにした印象的な美術作品がいくつか登場しますが、個人的に最も心に残った作品を教えてください。 眞栄田:俺はやっぱり(「縁」をテーマにした)F100号かな。撮影もほぼ1発撮りで絵を描いて。ものすごい緊張感があったんです。撮影含めて思い出のある作品です。 桜田:私は自分が描いた天使の絵です。作中で八虎の心を動かすきっかけになるだけの存在感もあるし、どこか優しい芯の通ったところもある。「見る人によって、感じ方が変わる絵だな」と思っていました。そういう部分を劇中でもとても大切にしていたので印象に残ってます。 眞栄田:手がいっぱいついてる、観音様のやつもいいよね。 桜田:あれはほんとに圧巻でしたよね……! 板垣:僕は最終試験のヌードの絵です。あれ実は、(完成するまでの)過程の絵もすごくたくさんあるんですよ。八虎が1個1個筆を入れていく姿も現場で見れたし、気に入ってます。 高橋:「絵」と言われると違うかもしれないのですが、僕はユカちゃんの試験のバッテンが印象に残っています。あれを描くってなったときに、「どういうつもりでこのバツを描けばいいのかな」って。ゆかちゃんの心情を理解するだけでは到底できないなと思ったので、バツを描くだけですが、何回かやっているんですよ。 ーーそれだけこだわりがあったんですね。 高橋:ユカちゃんが今まで表面的に出してこなかった、自分を固めていた硬いものを、あのバツの2画で飛ばせるぐらい迫力のあるものにしたいなと。弱さだったりとか、甘えだったりとか……。それぐらい説得力を持ってやらないといけないと思ったんです。ただキャンバスにバツを描くという行為じゃなくて、1つの作品にしたかった。僕はあのバツの作品は、弱さの象徴だと思っていました。 眞栄田:確かに……。『ブルーピリオド展』にもバツの展示、ありましたしね。
“努力できる才能”について
ーー映画では「才能」と「努力」がテーマの一つとして描かれています。俳優として「才能がある人」とはどのような人だと思われますか? 代表して眞栄田さん、お願いします! 眞栄田:“努力できる人”じゃないですか? 全員:(頷く) 高橋:本当に、努力できる才能がある人が強いですよね。 眞栄田:この世界だと、才能があるように見える人って、自分で才能を作っている気がするんです。スポーツとか肉体を使うものは確かに才能だったり、ときには遺伝子だったりが大事になってくると思いますけど。そういうものもないわけじゃないかもしれないけど、努力をしている人が才能ある人になるんじゃないかな。
すなくじら