ベーシックインカムは現代社会のどんな課題を解決できるのか?
失業者に押し付けられる「技術革新」コスト
第二に、コンピューター技術の進化などに代表される技術革新、オートメーションの進展によって、賃金が支払われる形態の労働は、数を減らし、またその多くの賃金は、それで生活を支えるのが難しいほど低くなってきています。 オックスフォード大の2人の研究者が2年前に公表した研究によれば、アメリカの今ある仕事(支払い労働)のうち47%は、オートメーションによって消滅するだろうといわれています。現在のネオリベラリズムのもとでは、こうしたオートメーションのコストは、失業者に押し付けられている訳ですが、オートメーションが私たち人類に取って良いことであるならば、そのコストは社会化しなければなりません。 第三に、とはいえ、多くの人が食えなくなってしまえば、その国の政府は政権を維持できません。ネオリベラリズムの枠内でできることは、ひたすら経済成長を追い求めることだけです。これがどこまで雇用を生めるかの評価は別として、私たちの地球の有限な環境に悪影響があり、持続可能ではないことは、ますます明らかとなっています。廃棄物や事故によって、環境を汚染し続ける発電方法などは、その一例でしょう。現状では、それによって人びとの生活が支えられている地域があるわけです。 第四に、現行の社会保障制度は、機能不全に陥っています。もし人が飢えて死んでいくことを良しとしないのであれば、新しい制度を構築し直さなければなりません。日本の生活保護制度にあたる仕組みは、北欧や西欧では、2008年の金融危機まではまがりなりにもセーフティネットとして機能していましたが、金融危機以降の緊縮策のなかで、大きく後退し始めています。 それは財源の問題というより、制度の哲学に起因する問題です。現行の社会保障制度は、生活上のリスクには原則的には,社会保険制度によって対応し、税を財源とした生活保護的な仕組みは、あくまで一時的例外的な事例として設計されてきました。金融危機以降の経済状況の悪化は、一方で、後者の受給者が増大し、他方で、その増大を受け入れられない多くの市民による福祉受給者に対する悪感情を増幅させました。