黒田サプライズはないのか? 日銀会合「総括的検証」を総括的に予想する
9月20~21日に行われる日銀金融政策決定会合は、「総括的検証」が公表されます。政策変更、マイナス金利の深堀の可能性、結果を受けての市場の反応などについて、第一生命経済研究所の藤代宏一さんがQ&A方式で総括的に予想をします。
21日の会合で「マイナス金利の深堀」の可能性はあるのか?
Q:9月21日の会合で予想される政策変更は? A:デュレーション(国債の年限ごとの利回り)調整のみ。現行の7~12年を3~12年へと事実上の短期化。現行のデュレーションは昨年12月の「補完的措置」で決定されたものだが、当時、黒田総裁は「追加緩和ではない」としていた。デュレーション短期化のハードルは高くはない。 Q:なぜ、デュレーション短期化なのか? A:国債購入の「量」を減額することなく、イールドカーブをスティープ化(≒長短金利差が拡大方向へ)させる唯一の方法。イールドカーブのスティープ化によって金融機関への打撃が和らげば、政策効果が高まるという理解に基づく。 Q:マイナス金利深掘りの可能性は? A:筆者は少なくとも9月会合では深掘りがないと予想。日銀以外にマイナス金利の支持者が少ない状況下、相当強い自信がない限りマイナス金利深掘りを断行できない。銀行株を中心に日本株が下落したり、リスクオフの円高が進めば、さらに批判的な論調が強まる。1月29日のマイナス金利導入時のように“黒田バズーカ逆噴射”との酷評は避けたいところだろう。またイールドカーブが再びフラット化する可能性があり、本末転倒となるリスクがある。 Q:デュレーション調整のみの実質ゼロ回答となった場合、市場の反応は? A:米国時間21日、日本時間では22日の午前3時に連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表、同日午前3時30分からイエレン議長の記者会見が予定されていることもあって市場の反応を読むのは難しい。もっとも、会合結果が事実上のゼロ回答となっても、さほど失望は大きくないかもしれない。当初、筆者は日銀会合の結果が失望を招き円高・株安に繋がる可能性が高いとしていたが、8日の欧州中央銀行(ECB)理事会の反応をみて考え方をやや修正した。理事会後のドラギ総裁の会見では、追加緩和に前向きな姿勢が修正されたにもかかわらず、市場の反応は限定的だった。日銀と同様、金融政策の限界が意識されているECBに対する市場の期待が低かったことが主背景だろう。皮肉なことに「金融政策の限界」が奏功する可能性がある。