JR東日本「消滅危機」ローカル線ランキング、合計赤字は757.7億円!1位は?
● 「県境またぎ路線」の苦悩 特急・急行が昭和末期~平成初期頃に全滅 営業係数ランキングの上位=費用対効果が低い区間の中でも、3位の陸羽東線(営業係数13465)、4位の花輪線、(同10916)、5位の飯山線(同10316)、6位の磐越西線、7位の水郡線、9位の米坂線には特徴がある。いずれも県境をまたいでいるのだ。 同じ県内であれば、通学や基幹病院への移動などで、一定の鉄道利用が見込める。加えて、かつては特急・急行列車が県境の峠を越えたことで、長距離運賃と特急料金などが経営を潤していた。例えば、3位の陸羽東線なら「急行たざわ」(仙台駅~秋田駅)、9位の米坂線なら急行「あさひ」(新潟駅~仙台駅)などだ。 これらの特急・急行列車の多くは、昭和末期から平成初期頃までに、全て姿を消している。かつ、県境の峠を越える国道はトラックが通れる程度に改修され、貨物輸送もほぼ全滅した。 公開資料に記載されている「1987年と比較した利用状況(平均通過人員)の推移」では、営業係数のワースト区間は軒並み80%~90%減を記録している。各線とも1日の乗客は軒並み100人~200人程度、単価の高い「長距離移動」「特急・急行料金」がないとあっては、収入の減少で営業係数が悪化するのは当然だろう。 また、県境区間は険しい山を越える上に、防災や治山などの対策がおざなりだったこともあり、がけ崩れなどによる運休も多い。上位区間のうち8位と9位の米坂線は22年8月の豪雨による被害で運休が続いており、約86億円という復旧費用を巡って、自治体とJR東日本の間で議論が続いている。2位の津軽線も被災による長期運休が続いており、自治体がバス・デマンドタクシー(「わんタク」)転換に同意する意向を示したため、このまま廃止となる可能性が高い、
● JR東日本の鉄道全体は1707億円の黒字 だけどローカル線は757.7億円の赤字! JR東日本の運輸事業の営業損益は、22年度は240億円の赤字だったが、23年度は鉄道運輸収入が増加したことにより1707億円の黒字だった。一方で、36路線・72区間の赤字ローカル線は合計で757.7億円もの営業損失を出しており、存在そのものが経営上の重荷となっているのは間違いない。 赤字ローカル線の多くは、鉄道の強みである「速達」「多量輸送」を発揮できておらず、ユーザー離れによってさらに赤字が膨らむ悪循環に陥っている。国もこういった事態を黙って見ている訳にもいかず、鉄道存続に固執しない、持続可能な地域公共交通の再構築(バス転換など)を目指す「再構築協議会」の設置を認めた。現在、JR西日本管内の芸備線の一部区間について、国土交通省が自治体とJRを取り持ち協議が進んでいる。 今後の話し合いの内容によっては、路線の一部廃止・バス転換なども視野に検討が進む可能性がある。その芸備線を含む、JR西日本管内の「営業係数ワーストランキング」も併せてチェックしてほしい。 【訂正】記事の初出時より以下の通り訂正しました。 20~21段落目 現在、JR西日本管内の芸備線の一部区間で鉄道廃止・バス転換に向けて、国土交通省が自治体とJRを取り持ち協議が進んでいる。 → 現在、JR西日本管内の芸備線の一部区間について、国土交通省が自治体とJRを取り持ち協議が進んでいる。今後の話し合いの内容によっては、路線の一部廃止・バス転換なども視野に検討が進む可能性がある。 (2024年11月13日 9:00 ダイヤモンド編集部)
宮武和多哉