新生「銀座ソニーパーク」が竣工 低層の打ち放しコンクリート建築
2025年1月にグランドオープンを迎える「銀座ソニーパーク(Ginza Sony Park)」が8月15日に竣工し、報道関係者に披露された。地下4階、地上5階建ての低層構造で、銀座の標準的な建物の半分ほどの高さにあえて設計することで集積率の高い銀座の街に「余白」を創出したという。テナントは一切誘致せず、アクティビティやイベントといったさまざまなプログラムを入れ替わりで展開することで、常に変化のある施設として運営する。 【内部の様子】
「ソニーパーク」誕生の背景
銀座ソニーパークは、同所に1966年4月29日にオープンした銀座ソニービルのリニューアルプロジェクトを通じて誕生。銀座ソニービルのデザインは建築家の芦原義信が手掛け、晴海通り側の壁面にはめ込んだ2300個のテレビ用ブラウン管を用いた電光文字表示や、銀座の一等地である数寄屋橋交差点角地に10坪のパブリックスペース「ソニースクエア」を設けたことなどで話題を集めた。ソニーのファウンダーの一人でソニービルの創業者である盛田昭夫氏はソニースクエアを「銀座の庭」と呼んだという。 銀座ソニービルのリニューアルプロジェクトを推進してきたソニー企業は、2013年頃からソニービルを生まれ変わらせるための検討を開始し、2017年3月に建て替えのためソニービルを閉館。「建て替えプロセスもソニーらしくユニークに行いたい」という考えから、建物の解体途中を公園にするという全く新しい発想で、2018年に旧「銀座ソニーパーク」を開園した。 旧ソニーパークは当初2020年までの開園を予定し、新生銀座ソニーパークの2022年秋の完成を目指していたが、当初の想定よりも時間を要することが顕在化したため、開園期間が2021年9月まで延長。新生銀座ソニーパークの完成時期も2025年にずらした。
芦原義信が手掛けたソニービル時代の建築から何が変わったか
新生銀座ソニーパークでは、ソニービル時代から50年間続く「銀座の庭」の思想を継承。当時と同様に「都市そのものに余白を」という考えから、低層にすることで余白を作ったという。 外観は銀座ソニービル時代から打って変わって、ステンレスのグリッド状のフレームが覆う打ち放しコンクリート建築が特徴。普通ベニヤ型枠を採用したコンクリート打設により、大らかでプリミティブな表情を演出したという。「街と公園とつなぐ柵」のようなイメージで作り上げたグリッド状のフレームは、ファサードの役割に加えて、アートとのコラボレーションに活用できるほか、将来的に拡張できるような構造に仕上げた。地上2階部分を中心に自然光や自然風をもたらすことができるのも今回の設計ならではとしている。設計はGinza Sony Park Projectが手掛けた。 また、ソニービルが大切にしてきた「街に開かれた施設」という設計思想に加えて、3方向が道路に面し、地下鉄コンコースにも直結するなど、都市機能と建物を有機的に結びつける「ジャンクション建築」と、建物を有効に活用するという視点で編み出されたスキップフロアによって地上階のフロアを連続した空間でつなぐ「縦のプロムナード」といったユニークな建築的な要素を反映。 開放的な吹き抜け空間に仕上げた地上1階では、数寄屋橋交差点からの動線を受け入れるデザインを設計し、地下フロアも内と外を区切る扉や壁をなるべく設けずにシームレスな人の流れを作ることを意識したという。リニューアル後も旧ソニーパークと同様に、屋上を含む地上の一部フロアにベンチを設置。余白を楽しむように休憩できるようにした。なお、各フロアの天井高はあえて変えることでリズム感を創出したという。 地下のフロアは「壊すと崩れてしまうリスクの回避」と「歴史継承」の意味合いを込め、作り替えるのではなく、イノベーションに近い作り。青タイルの壁面や「SONY」ロゴのネオンサインの看板など、かつてのソニービルの躯体の一部を残した。 随所にこだわりを取り入れた新生ソニーパークの総工費は非公表だが、建物全体がコンパクトな作りであることや、自然風が吹き込む地上階には空調設備は導入していない点から、「トータルコストは一から建物を建てるよりも低い」(ソニー企業 永野大輔代表取締役社長)という。