HRC渡辺社長が語る、ホンダのドライバー育成の今後「角田裕毅をテストだとしてもレッドブルに乗せるよう、ホーナー代表に強くプッシュしている」
■岩佐については「マルコさんと議論している」
一方で、今F1を目指している段階にある岩佐は、少し状況が異なるようだ。岩佐は今年、スーパーフォーミュラにTEAM MUGENからフル参戦しながら、レッドブルの姉妹チームであるRBのシミュレータドライバーを務め、そのパフォーマンスを支えている。 「岩佐に関しては、来年はRBのリザーブドライバーというのが基本的なポジションになると思います。彼も、そこからRBのレギュラーを目指すというのが基本線だと思います」 前述の通り、レッドブルとホンダの育成プログラムは今年で終了という筋書きになっているが、岩佐に関する部分だけは、来季もレッドブルとホンダの協力関係が残る可能性があるという。 「マルコさんと、岩佐の件で色々を議論しているのは事実です。岩佐歩夢にとって、来シーズンどういうステップを踏むのが、彼の将来に繋がるのかということも含めてです。リアム・ローソン(現RB)のようにリザーブとして全てのF1のレースに帯同するというのもやり方のひとつでしょうし、来年もスーパーフォーミュラに乗りながらということも選択肢としてあります。乗った方がいいかな……とは思っているんですけどね」
■ホンダの次なる期待……フランスF4王者加藤大翔
なおホンダ育成のドライバーとしては、もうひとり有望株がいる。それが、暫定ながら今季のフランスF4でチャンピオンに輝いた加藤大翔である。加藤に関しては、レッドブルは全く関与していない。 「我々の育成の目的は、F1というトップカテゴリーで通用するドライバーを育成するということです。これは2025年以降も全く変わりません」 「加藤選手に関しては、完全に(ホンダ)育成の人なので、チャンピオンを獲って、次のステップに行ってもらいます」 ただ加藤以降のドライバー育成に関して、アストンマーティンの育成プログラムと共に行なうことについては、まだ計画がないと渡辺社長は言う。 「アストンと共同で育成をするという計画は現時点ではありません。将来的に絶対にやらないということではありませんが、まだ合意できるようなプログラムはないんです。少なくとも来年については、アストンと組むということは基本的にはないです」 「加藤選手に関しては今年もホンダ単独でやっていますし、来年もホンダでやります。どこにステップアップさせるかということについては、我々のエクゼクティブ・アドバイザーである佐藤琢磨と、レース運営室長の桒田哲宏が、プランを作って提案してくれることになっています」 渡辺社長は、F1を目指して自身のブランド価値を高めようと日々奮闘する岩佐、そして海外での活動のために自分自身でも多くの努力をした加藤について、非常によくやっていると評価する。 「彼らは頑張っていますよ。世界で活躍している人たちは志も高いですし、メーカーにおんぶにだっこというわけでもなく、自分の夢を実現させるために頑張っています」 「だからこそ夢が叶うようにしてあげたいし、その過程で我々のところから一時的にでもいなくなるということなのであれば、それはそうすべきです。そういうことに関して、我々がノーと言うことはないです」 なお日本国内において、モータースポーツへの注目度が以前のようには高くない。モータースポーツに参戦している自動車メーカーとして、この状況を打開する計画は何かないのか? 渡辺社長にそう尋ねた。すると渡辺社長は、アメリカのメジャーリーグで活躍する大谷翔平のように、世界で真の意味でトップのドライバーを日本から輩出することが、国内でのモータースポーツへの注目度を高めるキッカケになるとして、F1世界チャンピオンを生み出すことを目標に育成プログラムを続けていきたいとの考えを示した。 「最近よく言っているんですけど、やっぱりモータースポーツで”大谷”を出さないとダメだと思いますよ。つまりF1のワールドチャンピオンを輩出しない限り、ダメだと思います」 「そこに一歩でも近づけるように、ドライバー育成をやっていきます。イベント開催ももちろん大事ですから、それもやります。でもやっぱり、とにかくトップドライバーを出すということが大事だと思います」
田中 健一
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